環式化合物(読み)カンシキカゴウブツ(英語表記)cyclic compound

デジタル大辞泉 「環式化合物」の意味・読み・例文・類語

かんしき‐かごうぶつ〔クワンシキクワガフブツ〕【環式化合物】

原子が環状に結合した構造分子内にもつ化合物。環が炭素原子からなる炭素環式化合物と、環に炭素以外の原子が加わる複素環式化合物とに大別される。また、環を構成する原子の数が五つなら五員環、六つなら六員環のようにいう。環状化合物環式体。→鎖式化合物

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精選版 日本国語大辞典 「環式化合物」の意味・読み・例文・類語

かんしき‐かごうぶつクヮンシキクヮガフブツ【環式化合物】

  1. 〘 名詞 〙 原子が環状に結合している化合物。主として有機化合物にみられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「環式化合物」の意味・わかりやすい解説

環式化合物 (かんしきかごうぶつ)
cyclic compound

環状の骨格をもつ化合物の総称。環式化合物は,環をつくる原子がすべて炭素である炭素環式化合物と,炭素以外の原子を含む複素環式化合物分類される。さらに炭素環式化合物は,ベンゼン環をもつ芳香族化合物ベンゼン環をもたない脂環式化合物に大別される。シクロヘキサンは脂環式化合物,ベンゼンは芳香族炭素環式化合物であるのに対して,ピリジンは芳香族複素環式化合物である。ピペリジンのように骨格に多重結合をもたない複素環式化合物もある。環式化合物は環の数によっても分類される。これまでに例としてあげたもののように環1個だけを含む単環式化合物と,ボルネオールのように2個以上の環をもつ多環式化合物がある。多環式化合物のあるものはかご状構造をとるのでかご形化合物といわれる。キュバンはその一例である。環式化合物はまた,環をつくる原子数によっても分類される。原子数が最も小さな3個の環は3員環,以下順に4員環,5員環などと呼ばれる。シクロヘキサン,ベンゼンなどは6員環化合物であるのに対し,ボルネオールの2個の環はいずれも5員環である。キュバンは4員環6個が縮合して生じた化合物である。なお12員環あるいはそれ以上の環式化合物は大環状化合物と呼ばれて,それ以下の環式化合物と区別されることがある。

 炭素が結合して環をつくる可能性は,1865年F.A.ケクレによって,ベンゼンの構造に関連して初めて指摘された。飽和炭素鎖も環をつくる可能性はそれに遅れて指摘された。1883年ころパーキンWilliam Henry Perkin(1860-1929。合成染料工業創始者として有名なパーキンの同名の息子)は,シクロペンタン誘導体の合成に成功し,初めて脂環式化合物の化学を導入した。

 環をつくる反応(閉環反応あるいは環化反応という)には次のような型がある。

(1)マロン酸エステル合成の利用

(2)ジカルボン酸熱分解

(3)ディークマンDiekmann反応(5員環,6員環向き)

(4)アシロイン縮合

(5)ソープThorpe反応(大環状化合物に適する)

(6)ディールス=アルダーDiels-Alder反応

ジエン合成


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「環式化合物」の意味・わかりやすい解説

環式化合物
かんしきかごうぶつ
cyclic compounds

分子を構成する原子が環状に結合した化合物の総称。環状化合物、環式体ともいう。鎖式(状)化合物に対比される語。主として有機化合物にみられ、環構成原子がすべて同種類のものを同素環式化合物、炭素以外の異原子(ヘテロ原子ともいう)を含むものを複素環式化合物(ヘテロ環式化合物)という。前者の大部分は炭素からなる炭素環式化合物であるが、ペンタゾール誘導体のように窒素のみで環を構成するものも存在する。

 環式化合物は、不飽和度、芳香族性、環の大小、縮合環の数などによって分類される。たとえば炭素環式化合物は、環の構造により、分子内にベンゼン環を含む芳香族化合物と、それ以外の脂環式化合物に分けられる。後者は環式構造をもっているが、性質は鎖式構造の脂肪族化合物に似ているのでこの名がつけられた。

 環構成原子の数nを環の員数といい、nの数に応じて3員環、4員環……などとよぶ。環式化合物の化学的性質は、環の大小により支配される。複素環式化合物には慣用名があり、たとえば3員環エーテルはオキシラン、3員環イミンはアジリジンなどとよばれている。さらに官能基による分類もあり、環状ケトン、環状アミド、ラクトンなどがこの例である。

 近年になって特殊な構造をもつ環式化合物が知られるようになり、化学的性質、用途などの研究が進められている。

[向井利夫]

『中川正澄著『構造有機化学』(1977・裳華房)』


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化学辞典 第2版 「環式化合物」の解説

環式化合物
カンシキカゴウブツ
cyclic compound

環状化合物,環式体などともいう.分子内で環状に原子が結合している化合物の総称.主として有機化合物にみられる.環を構成する原子がすべて同種の原子の場合は,同素環式化合物といい,炭素原子からなる環式化合物を炭素環式化合物という.炭素環式化合物は,環の構造によって,脂環式化合物芳香族化合物とに分けられる.環を構成する原子のなかにヘテロ原子が含まれている場合は,複素環式化合物という.環の部分を核とよぶこともあり,n個の原子でつくられた環をnに応じて,三員環,四員環,…,などとよぶ.環を一つだけもつ単環式化合物,1個の原子が二つ以上の環の構成原子になっているスピロ化合物,縮合環化合物,ビシクロ化合物,トリシクロ化合物などの多環式化合物がある.

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百科事典マイペディア 「環式化合物」の意味・わかりやすい解説

環式化合物【かんしきかごうぶつ】

分子内で原子が環状に結合している化合物の総称。鎖式化合物に対していう。有機化合物に多く,環状構造が炭素原子だけからなるものを炭素環式化合物,他の原子を含むものを複素環式化合物という。
→関連項目有機化合物

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「環式化合物」の意味・わかりやすい解説

環式化合物
かんしきかごうぶつ
cyclic compound

分子を構成する原子が結合して環状の構造をとっている化合物。有機化合物に多くみられる。環構成原子がすべて炭素から成るものを炭素環式化合物といい,ベンゼン,ナフタリン,シクロヘキサン,シクロブタンなどがその例。ベンゼン環で代表される芳香族化合物とシクロブタン,シクロヘキサンなどの脂環式化合物とに分類される。炭素以外に窒素や酸素などの原子を環の構成員として含むものを複素環式化合物もしくは異節環化合物といい,ピロール,フラン,チオフェンなどがその例。さらに分子内にもつ環の数により単環式化合物と二環式化合物,三環式化合物などの多環式化合物とに分れる。また,環を構成する原子の数によって三員環,五員環,六員環などという。

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