改訂新版 世界大百科事典 「環状剝皮」の意味・わかりやすい解説
環状剝皮 (かんじょうはくひ)
ringing
果樹や花木の幹または太枝に直径の1/10~1/20の幅で浅く切り込みを入れ,樹皮を環状に除去することで,環状除皮ともいう。葉で同化された炭水化物の一部は師管を通って幹や根へと転流してゆくが,環状剝皮を行って師管部を除去すると,転流がさまたげられるので,剝皮部よりも上方では炭水化物の濃度が高まって,不定根が発生しやすくなる。このため,取木を行う場合には枝に環状剝皮を施すことが多い。また環状剝皮を行って枝の炭水化物濃度を高めると,花芽の形成が良好となり,落果が少なく,熟期も早くなるが,根への炭水化物の転流量が少なくなるので樹勢が衰える。したがって,経済栽培では,花芽形成の促進や落果防止のために環状剝皮を行うことは少ない。
執筆者:杉山 信男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報