取木(読み)トリキ(英語表記)layerage

デジタル大辞泉 「取木」の意味・読み・例文・類語

とり‐き【取(り)木】

新株を得る方法の一。枝などに傷をつけ、たわめて土中に埋める(伏せ枝法)か、枝の樹皮の一部をはぎとってミズゴケを巻きつける(高取り法)かしておき、根が出たあとで親株から切り離して苗木にする。ゴムノキシュロチクなどに応用される。圧条あつじょう。取り枝。 春》

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精選版 日本国語大辞典 「取木」の意味・読み・例文・類語

とり‐き【取木】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 植物の人工的な無性繁殖法の一つ。木本性の植物で挿木や接木(つぎき)が容易でない場合に行なわれる。枝を切らないでその一部を土で覆うか、剥皮し水苔などを巻いて水分を保って発根をうながし、発根したのちに母植物から切り離して、独立した新個体として栽培する。クワ果樹庭木等で広く行なわれている。圧条(あつじょう)。とりえだ。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「Arborideus ramus〈略〉Toriqini(トリキニ) スル エダ」(出典:羅葡日辞書(1595))
  3. 舵を取って回すため舵の身木(みき)頭部にとりつける柄。舵柄(かじづか)。〔和漢船用集(1766)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「取木」の意味・わかりやすい解説

取木
とりき
layerage

植物の幹や枝の一部分から新しく発根させ、独立した個体をつくる増殖法で、栄養繁殖の一種である。母体となる幹や枝を、親株から切り取ってから発根させる挿木と異なり、取木は直接発根させたのち、分割または切り取るものである。挿木で発根しにくいものや、幹が太く扱いにくいものの繁殖法として適し、また鉢植えなどで観賞しながら殖やすことができるが、一度に多数殖やすことはむずかしい。

[堀 保男]

方法

(1)盛土法(伏せ込み法) 一般に用いられる方法で、地際より伸びている枝を横に曲げ、針金または重石(おもし)で押さえ、さらにその上に土を盛り発根させる。盛土する枝の部分に環状剥皮(はくひ)か切り目を入れると発根が早まる。株立ちしたロウバイ、つるバラなどに利用される。(2)高取法 生育中の枝をそのまま取木する方法で、とくに幹や枝が太い場合や地面に曲げられない状態の木に利用される。取木する部分の樹皮を5~10ミリ環状に除去(環状剥皮)し、樹液が出たらよくふき取り、その部分をミズゴケまたはケト土などで団子状にくるみ、外側をビニルなどで包んで両端を結束する。発根するまで乾燥しないよう管理する。ザクロ、カエデ類、サクラゴムサルスベリなどによく用いられる。除皮処理の理由は、葉で形成された炭水化物などの養分が根部のほうに移行するのを抑え、蓄積させることで発根を促すためである。なお、発根後は、根が外から数本確認できたら剥皮した下側で切断し、またミズゴケは完全に取り除いてから植え付ける。

 取木の時期は植物が活動期に入った5~6月が適期である。また落葉樹では発芽直前の4月が適するものもある。発根は樹種により差があり、早いもので3か月、遅いものでは1年近くかかる。

 取木の方法としては、ほかに〔1〕枝の先端を土中に埋める先取法、〔2〕よく伸びた枝を湾曲にし、波状に起伏させた百足(むかで)取法、〔3〕枝を真横に倒し各節部から発根させる撞木(しゅもく)取法などがあるが、一般にはあまり利用されない。

[堀 保男]


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改訂新版 世界大百科事典 「取木」の意味・わかりやすい解説

取木 (とりき)
layerage
layering

観葉植物,花木,盆栽,リンゴの矮性(わいせい)台などで行われる栄養繁殖法の一種で,枝の一部分を土やミズゴケで包んだり,枝を地面に押し曲げて覆土したりして不定根を発生させた後,母植物から切り離して新個体を得る方法である。この点,枝を母植物から切り離した後,不定根を発生させる挿木とは異なる。取木には次のような方法があり,比較的簡単で確実な繁殖法であるが,一時に多数の植物を増殖することは難しい。

(1)普通法 枝先15~30cmの部分を曲げ,地面に掘った穴に入れて覆土する。枝の先端は地上に出し,土中の曲げた部分から発生してくる不定根とともに切り離す。

(2)トレンチ法 溝を掘り,枝を水平に伏せて覆土し,この枝から発生する不定根および新梢の部分を切り離して一度に数個体を得る。

(3)盛土法 母植物を地際で切断し,多数の新梢を発生させ,これらの基部に盛土をして不定根を発生させてから新個体を分割する。

(4)高取法 生育中の枝に湿った粘土やミズゴケを巻き,その上をビニルで包み,発根後切り離す方法で,観葉植物(ゴム,ドラセナなど)や盆栽で行われる。

 いずれの方法でも,発根を促すため,取木を行う部位に切り傷をつけたり,環状剝皮を施したりすることが多い。
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百科事典マイペディア 「取木」の意味・わかりやすい解説

取木【とりき】

植物の栄養繁殖の一方法で,花木類や樹木などによく用いられる。幹に傷をつけ水草などを巻いて発根させるか,母樹の若枝を曲げて地中に埋め発根させたあと,母植物から切り離す方法である。一般に,挿木法では発根しにくい植物に多く利用する。小枝の多い長い枝を埋め,発根後各小枝から切り離すのを撞木(しゅもく)取りという。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「取木」の意味・わかりやすい解説

取木
とりき
layering

植物の人工的な栄養生殖 (無性繁殖) の一方法。木の枝などを母植物につけたまま,その部分を湿った土またはミズゴケでおおい,発根するのを待って母植物から切り離す。クワ,ブドウ,ボケ,ゴムノキなど実生や挿木 (さしき) ではふやしにくいものに行われる。

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世界大百科事典(旧版)内の取木の言及

【園芸】より

…また,育苗を兼ねて鉢作りする業と庭木,植木に育てあげる業は別である。繁殖はおおむね実生,挿木,接木,取木,株分けなどの方法で行われるが,最近はミスト法や発根剤が使用されている。【浅山 英一】
【園芸植物】
 園芸的な栽培の対象となる植物を園芸植物というが,園芸で取り扱う範囲が多様なため,それを分類しようとしても特徴的なまとまりはあまりない。…

※「取木」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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