甚う(読み)イトウ

デジタル大辞泉 「甚う」の意味・読み・例文・類語

いとう〔いたう〕【甚う】

[副]副詞「いたく」の音変化》
はなはだしく。ひどく。
「物―言ひたる」〈二八
(あとに打消しの語を伴って)それほど。たいして。
「あいなければ―嘆かしげにも言ひなさず」〈若紫

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「甚う」の意味・読み・例文・類語

いとういたう【痛・甚】

  1. 〘 副詞 〙 ( 形容詞「いたし」の連用形「いたく」の変化した語 )
  2. 程度のはなはだしいさまを表わす語。ひどく。たいそう。
    1. [初出の実例]「とよめりければ、いといたう心やみけり」(出典:伊勢物語(10C前)五)
    2. 「晦日(つごもり)の夜、いたう闇きに、松どもともして」(出典徒然草(1331頃)一九)
  3. 精神的、肉体的に苦痛を感ずるさまを表わす語。つらく。つらい思いで。
    1. [初出の実例]「然(さ)るは痛う云たる奴なれば」(出典:今昔物語集(1120頃か)二九)

甚うの語誌

( 1 )は「いたう」と音便化していても、形容詞「いたし」の連用形であり、なお副詞化は十分でない。それに対して、は十分に副詞化していて、「いと」とほとんど同義である。
( 2 )「いと」が主として形容詞を修飾するのに対して、「いたう」は主として動詞を修飾する傾向が強い。なお、韻文では「いたう」を使わず、音便化する前の「いたく」の形を使う傾向が顕著である。

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