改訂新版 世界大百科事典 「生態的ピラミッド」の意味・わかりやすい解説
生態的ピラミッド (せいたいてきピラミッド)
ecological pyramid
一つの生物群集の中で,食物連鎖(食う・食われる)の関係にある生物種の個体密度を比較すると,一般に食う動物は食われる動物より少ない。こうした関係を図にして栄養段階の低いもの(食われる方)から高いもの(食う方)へと順次積み上げるとピラミッド型となる。これは,イギリスの生態学者C.S.エルトンが1927年に個体数に着目して提案したので,〈個体数のピラミッド〉または〈エルトンのピラミッド〉と呼ばれている。個体数のピラミッドでは,樹木とその葉や材を食う多数の昆虫の関係(生食連鎖)や,寄生虫と宿主の関係(寄生連鎖)などの場合では倒立する。しかし,これらの場合でも個体数のかわりに生物量(乾物重量,または炭素,窒素などの生物体構成物質量)で表した〈生物量のピラミッド〉では倒立することはなくなる。さらに,各栄養段階の生物生産速度またはエネルギーの流れに着目した〈生産速度のピラミッド〉または〈エネルギーのピラミッド〉を用いれば,この場合では熱力学第2法則に従って,閉鎖系であるかぎり決して倒立しない。これらを総合して〈生態的ピラミッド〉と呼ぶ。生態的ピラミッドは生物群集の各要素間の量的関係を表すのに有効である。食うものの量に対する食われるものの量の比率は餌の利用効率を見かけ上表しているものといえる。
執筆者:林 秀剛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報