エルトン(読み)えるとん(英語表記)Charles Sutherland Elton

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エルトン」の意味・わかりやすい解説

エルトン
えるとん
Charles Sutherland Elton
(1900―1991)

イギリス生態学者。J・ハクスリーのもとで動物学を学び、初期にはイギリス、スバールバル諸島カナダなどで、個体群の周期変動と動物群集の調査に従事。26歳の著『動物の生態学』(1927)は、食物連鎖・生態的地位・個体群動態を基本に、生態学に現代史を開いた名著とされる。1932年『動物生態学雑誌』を創刊。また同年オックスフォード大学に動物個体群研究所を設立し、1968年まで所長を務めた。その後、哺乳(ほにゅう)類の個体群動態論を進め、『ノネズミ・ハタネズミ・レミング』(1942)を完成。また1943年には、生態学の長期継続研究のため、オックスフォード近郊のワイタムの森を入手し、世界中の研究者を招いて、さまざまな動植物個体群や群集調査の拠点とした。また自らは、個体群と生息場所の散在を軸に群集の様式論を深化させ、とくにエッセイ『個体群の相互的散在』(1949)と大著『動物群集の様式』(1966)は、その後の生態学全体の進展に大きく寄与した。なお、外来種に対する群集の抵抗性を軸に、自然保護を多様性の観点から論じた『侵略の生態学』(1958)もある。なお夫人は、自然詠詩人として知られる。

川那部浩哉

『渋谷寿夫訳『動物の生態学』(1955・科学新興社)』『川那部浩哉他訳『侵略の生態学』(1971・思索社)』『川那部浩哉他訳『動物の生態』(1978/新装版・1989・思索社)』『遠藤彰・江崎保男訳、川那部浩哉監訳『動物群集の様式』(1990・思索社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エルトン」の意味・わかりやすい解説

エルトン
Elton, Charles (Sutherland)

[生]1900.3.29. リバプール
[没]1991.5.1. オックスフォード
イギリスの動物学者。動物生態学の確立者。オックスフォード大学で動物学を修める。 V.シェルフォードによる個体数変動の理論から強い影響を受け,1921年に J.ハクスリーの助手としてスピッツベルゲン探検隊に参加した際に,その実践を開始し,のち,1923,1924,1930年に極地で調査を行なう。極地探検が機縁となって勤めることになったハドソン湾毛皮会社から,カナダでのキツネの個体数変動に関する統計を入手し,これを分析して,餌であるネズミの個体数変動がその原因であることをつきとめ (1924) ,食物連鎖を通じて個体数の調節が行なわれることを示した。 1927年に著した『動物生態学』 Animal Ecologyでは,動物社会を分析するすぐれた手法を提示したばかりでなく,食物連鎖,個体数ピラミッドなど,その後の動物生態学の発展にとって基本となる諸概念を確立した。また『動物生態学と進化』 Animal Ecology and Evolution (1930) で,動物に備わった移動性を強調し,環境によって動物が自然選択を受けるのではなく,環境が動物による選択を受けるのだ,と唱えて独特の進化観を表明している。 1932年,オックスフォード大学に動物個体群研究所を設立。個体群変動に関する研究の世界的中心地となった。同年より『動物生態学雑誌』 Journal of Animal Ecologyの編集長。第2次世界大戦中は,ペスト防疫のためのネズミ対策についても研究を行なっている。 1953年よりロイヤル・ソサエティ会員。

エルトン
Elton, Oliver

[生]1861.6.3. ノーフォーク,ホルト
[没]1945.6.4. オックスフォード
イギリスの文学史家。リバプール大学英文学教授 (1901~25) 。北欧文学の翻訳や『イギリスの詩神』 The English Muse (33) などの著書もあるが,主著は『イギリス文学概観』A Survey of English Literature (3部,12~28) 。

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