日本大百科全書(ニッポニカ) 「生態的防除」の意味・わかりやすい解説
生態的防除
せいたいてきぼうじょ
農作物の病気や害虫の生態を重視し、病害虫の発生を回避して被害を軽減し、結果的に病害虫を防除する方法。病害虫の発生に好適な環境とくに温湿度の制御(温室の湿度を下げ病気の発生を予防、穀物の低温貯蔵による害虫の被害回避)、農作物の作期の移動(イネの晩植による紋枯(もんがれ)病、ニカメイチュウの被害回避)、輪作(連作による土壌病害の増加を防ぐため、異なった種類の作物を作付けする)などがおもな方法である。このような方法はいずれも農作物の耕種方法と関連するため、耕種的防除ともいわれるが、耕種的防除には抵抗性品種の栽培なども含まれ、生態的防除よりも範囲が広い。農薬を利用した化学的防除に対して、農薬を用いない防除の方法を総称して生態的防除という場合もある。
[梶原敏宏]