連作(読み)れんさく(英語表記)continuous cropping

精選版 日本国語大辞典 「連作」の意味・読み・例文・類語

れん‐さく【連作】

〘名〙
① 毎年、同じ土地に同じ作物を連続して栽培すること。
② 文芸・美術・音楽などで、内容上関連のある作品を次々とつくること。また、短歌・俳句などで、一人の作者が同一の題材についていくつかの作品をつくり、全体としても一編のまとまりを持つように構成すること。また、その一連の作品。
※続新歌論(1901‐02)〈伊藤左千夫〉四「歌の連作なる物は、始め一題十首の歌より起れり」
③ 数人の作家が、それぞれ一部を受け持って、全体として一つにまとまった小説をつくること。また、その作品。

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デジタル大辞泉 「連作」の意味・読み・例文・類語

れん‐さく【連作】

[名](スル)
同じ耕地に同じ種類の作物を毎年続けて作付けすること。ナス・トマトなどでは生育が悪くなる。「サトイモ連作する」「連作障害」⇔輪作
文芸・美術などで、同じテーマやモチーフに基づいて一連の作品を作ること。また、短歌・俳句などで、一人の作者が同じ題材でいくつかの作品を作り、全体として一つの味わいを出そうとするもの。また、その作品。
数人の作家が一部分ずつを分担し、全体として一つにまとまった小説を作ること。また、その作品。
[類語]合作競作オムニバス

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改訂新版 世界大百科事典 「連作」の意味・わかりやすい解説

連作 (れんさく)
continuous cropping

同じ水田あるいは畑に同一種の,または近縁の作物を毎年続けて栽培すること。水田では田畑輪換を行うわずかな場合を除いて,一般には長年にわたって夏には水稲だけが栽培されているが,連作に伴う障害はほとんど見られない。日本人にとっては当然のことのように思われようが,世界的にみてもこんなに長い間連作できる作物栽培は特異な例である。その原因は,夏季湛水たんすい)状態にある水田土壌の特殊な性質によるものと考えられている。夏には湛水で土壌が還元状態になり,冬には気温が低く乾きすぎることもない。そのために酸化的な畑土壌中のようには有機物の分解が進まず,高い有機物含有状態が維持され,また,畑では不足したり有効化しにくいリン酸が可溶性となる。一方,灌漑水によってかなりの栄養塩類が補給されるとともに,肥沃化した作土は風や雨によって侵食されることもない。そのうえ,有害微生物の発生は抑えられ,有毒物質が洗い流されるといわれている。水稲の作物としての性質も連作に耐えやすいようである。これらの諸条件が作用して水田稲作は連作されてきている。

 ところが畑作の場合は連作しているとしだいに作物の生育が悪くなり,収量も低下し,ひどい時には収穫にならない場合もある。作物の種類や土壌,気象,管理の方法などによってその現れ方や程度は異なるが,重要な作物でこのような障害が現れるものが多く,農林水産省の調査によると,陸稲,ビールムギ,ダイズ,トマト,キュウリ,ナス,ダイコンニンジンハクサイなど65種にのぼる。この現象は古くから知られていたが,原因不明のまま忌地(いやち)または連作障害と呼ばれてきた。しかし,近代農学の進歩に伴ってしだいに原因の解明が進み,微量要素の欠乏,病気やセンチュウの害,あるいは特異的な有害物質の蓄積によるなど,原因が判明したものも多い。しかし,いまだに原因あるいは対策が明らかでない例もかなりある。耕地の少ない農家にとって,野菜類は小面積の生産でも高い収益を得やすいために連作する場合が多く,それに伴う障害が多発している。また特定の野菜の主産地の多くは激発する連作障害に悩んでいる。そのためにつぶれてしまう産地もあり,産地移動も起こっている。原因が明らかになると,それに応じて薬剤や蒸気による土壌消毒,抵抗性品種の育成,抵抗性台木への接木,対象センチュウを抑制する植物の導入,などの対策が行われる。また,各種有機物施用によって土壌の微生物相のバランスを変える試みも行われている。現在十分解明されていないのは土壌微生物と,作物の生成する有害物質についてである。しかし,連作障害対策の基本は輪作によって障害発生を事前に回避することである。
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百科事典マイペディア 「連作」の意味・わかりやすい解説

連作【れんさく】

同じ畑に同種の作物を毎年続けて栽培すること。輪作の対。連作をすると忌地(いやち)現象の発生,特定養分の欠乏,病害虫の発生などにより生物の生育が衰え収量・品質が悪化することが多い。この弊害をさけるため輪作が行われるが,サツマイモなどはむしろ連作により品質がよくなる。水田におけるイネの連作には障害がない。
→関連項目野菜指定産地養液栽培

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「連作」の意味・わかりやすい解説

連作
れんさく

同じ作物を同じ耕地に毎年続けて栽培すること。一般に地力が消耗し,病虫害がふえ,収穫が減る。連作によって収穫が皆無の状態になることを忌地 (いやじ) といい,焼土や殺菌,木灰や石灰の施用によって人為的に地力を補給しなければならない。その作物の経済的価値が高く,ほかに代る作物のないときなどにやむをえず行う経営方式で,最近の農業技術の進歩は,養分の補給や病虫害の防除など,各方面から,不利をある程度除くことが可能になっている。

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