同じ水田あるいは畑に同一種の,または近縁の作物を毎年続けて栽培すること。水田では田畑輪換を行うわずかな場合を除いて,一般には長年にわたって夏には水稲だけが栽培されているが,連作に伴う障害はほとんど見られない。日本人にとっては当然のことのように思われようが,世界的にみてもこんなに長い間連作できる作物栽培は特異な例である。その原因は,夏季に湛水(たんすい)状態にある水田土壌の特殊な性質によるものと考えられている。夏には湛水で土壌が還元状態になり,冬には気温が低く乾きすぎることもない。そのために酸化的な畑土壌中のようには有機物の分解が進まず,高い有機物含有状態が維持され,また,畑では不足したり有効化しにくいリン酸が可溶性となる。一方,灌漑水によってかなりの栄養塩類が補給されるとともに,肥沃化した作土は風や雨によって侵食されることもない。そのうえ,有害微生物の発生は抑えられ,有毒物質が洗い流されるといわれている。水稲の作物としての性質も連作に耐えやすいようである。これらの諸条件が作用して水田稲作は連作されてきている。
ところが畑作の場合は連作しているとしだいに作物の生育が悪くなり,収量も低下し,ひどい時には収穫にならない場合もある。作物の種類や土壌,気象,管理の方法などによってその現れ方や程度は異なるが,重要な作物でこのような障害が現れるものが多く,農林水産省の調査によると,陸稲,ビールムギ,ダイズ,トマト,キュウリ,ナス,ダイコン,ニンジン,ハクサイなど65種にのぼる。この現象は古くから知られていたが,原因不明のまま忌地(いやち)または連作障害と呼ばれてきた。しかし,近代農学の進歩に伴ってしだいに原因の解明が進み,微量要素の欠乏,病気やセンチュウの害,あるいは特異的な有害物質の蓄積によるなど,原因が判明したものも多い。しかし,いまだに原因あるいは対策が明らかでない例もかなりある。耕地の少ない農家にとって,野菜類は小面積の生産でも高い収益を得やすいために連作する場合が多く,それに伴う障害が多発している。また特定の野菜の主産地の多くは激発する連作障害に悩んでいる。そのためにつぶれてしまう産地もあり,産地移動も起こっている。原因が明らかになると,それに応じて薬剤や蒸気による土壌消毒,抵抗性品種の育成,抵抗性台木への接木,対象センチュウを抑制する植物の導入,などの対策が行われる。また,各種有機物施用によって土壌の微生物相のバランスを変える試みも行われている。現在十分解明されていないのは土壌微生物と,作物の生成する有害物質についてである。しかし,連作障害対策の基本は輪作によって障害発生を事前に回避することである。
執筆者:塩谷 哲夫
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