日本大百科全書(ニッポニカ) 「田中金脈問題」の意味・わかりやすい解説
田中金脈問題
たなかきんみゃくもんだい
田中角栄内閣退陣の直接のきっかけとなった事件。1974年(昭和49)夏の参議院選挙敗北後、首相田中角栄の「金権政治」への批判が強まったが、同年10月発売の『文芸春秋』11月号は特集「田中角栄研究――その金脈と人脈」で、「田中ファミリー」が手がけた土地ころがしの実態を明らかにし、田中が資産形成にあたりその地位を利用して不当な利潤をあげていたことを暴露した。これをきっかけに、田中に対するジャーナリズム、野党などの批判は一段と強まった。田中は、内閣改造、フォード米大統領招聘(しょうへい)などによって切り抜けようとしたが、結局、11月26日退陣発表を余儀なくされた。辞職の弁で「金脈についてはいずれ真相を明らかにする」と言明したが、これは実行されず、疑惑自体の追及は不十分でうやむやの形に終わった。
[伊藤 悟]
『富森叡児著『戦後保守党史』(1977・日本評論社)』▽『立花隆著『田中角栄研究全記録』(1976・講談社)』