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利潤 りじゅんprofit

翻訳|profit

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

利潤
りじゅん
profit

会計学上は企業の総売上金額から,その生産および販売に要したあらゆる費用を差引いた残額のことであるが,総売上および総費用の内容が明確には規定できないため,資本設備の減価償却費,在庫,保有資産の価格変化による資本利得ないしは資本損失といった3つの大きな問題がある。経済学における利潤概念は,会計上の定義とは必ずしも一致せず,会計上の定義とほぼ一致するのは,自己資本に対する報酬としての利潤の定義である。しかしこの定義に見合う数字を得るには,会計上の利潤額からさらに若干の項目を差引かなければならない。さらに自己資本に対する帰属利子をも差引いて利潤と定義することもある。

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デジタル大辞泉の解説

り‐じゅん【利潤】

もうけ。利益。特に、企業において、総収益から賃金・地代・利子・原材料費などのすべての費用を差し引いた残りの金額。「利潤を追求する」
剰余価値の転化された現象形態

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百科事典マイペディアの解説

利潤【りじゅん】

総収入から総生産費を差し引いた残額。利潤の発生については,価値の分解部分として前提し,または価値法則の修正部分と解する古典派から,技術革新など新経済過程の創造である新機軸(イノベーション)から生ずるとする近代経済学派まで諸説がある。
→関連項目資本資本主義資本論マルクス経済学

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世界大百科事典 第2版の解説

りじゅん【利潤 profit】

ごく形式的ないい方をすれば,事業の販売収入から原材料費,賃金,借入資金に対する利子などの費用を差し引いた残額が利潤である。このような会計学的な規定は一見すると単純明快であるが,実のところは必ずしもそうではない。というのは利潤と費用の境目は必ずしも明確だとはいえないからである。たとえば従業員に支払われるボーナスは費用としての側面をもつとともに,他方では利潤からの分配分だという側面もあわせもっている。また事業主の得る所得の中にも費用としての性格をもっているものが少なからず存在する。

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大辞林 第三版の解説

りじゅん【利潤】

利益。もうけ。 「莫大な-をあげる」
企業において、総収入から生産のための費用(賃金・地代・利子・原材料費など)を差し引いた残り。なお、生産過程で労働力の搾取によって生み出される剰余価値の転化した形態という見方もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

利潤
りじゅん
profit 英語 フランス語
Profitドイツ語

利潤とは、売上高からその売上げに要した賃金・地代・利子・原材料費などの全費用を控除した額である。ところで一般に、賃金は労働用役に対する報酬であり、地代は土地用役に対する報酬であり、利子は資本用役に対する報酬であるとされるが、利潤は何に対する報酬であろうか。これにはいろいろな説があるが、通説に従ってそれらを分類すると、次のようになる。
(1)暗黙的要素収益説 個人業主などに顕著にみられるように、利潤といわれるものには生産要素への報酬とみなさるべきものが含まれている。たとえば、本来、本人の労働用役に対する報酬である賃金、本人所有の資本用役に対する報酬である利子、本人所有の土地(自然資源)用役に対する報酬である地代、すなわち暗黙的賃金、暗黙的利子、暗黙的地代要素とみなさるべきものが利潤のなかに含まれている。
(2)独占説 生産要素の供給が、自然に、もしくは人為的に制限されることから生ずる。
(3)新機軸説 利潤は企業家の新機軸、すなわち新しい商品の導入、新しい生産方法の開発、新しい市場や供給源の開拓、新しい経営組織の確立、といった事柄に対する報酬であり、これらの新機軸が模倣されて他の企業に普及していくにつれて消滅する。
(4)危険負担説 貨幣経済の特徴は、それが将来の不確実性を内包しているということである。したがって、企業家は事業を行うにあたって危険を負担しなければならず、企業家にその危険を負担させるには、一定の報酬、すなわち利潤が与えられなければならない。
 新機軸説もこの危険負担説の特殊ケースであると考えることができる。なぜならば、新機軸はまさに将来が不確実であるがゆえに意味をもつものだからである。
(5)剰余価値説 利潤は剰余価値の転化された現象形態としてとらえられる。すなわち、ある財の生産に投下される労働時間と、その財を生産するために投下される労働力の再生産に必要な労働時間(これは労働者の生活資料の生産に要する労働時間で計られる)の差として定義される剰余価値の現象形態とみなされる。したがって利潤は、労働時間の延長や必要労働時間の短縮によって増加する。なお、この説では、利潤には利子や地代も含まれることになる。[大塚勇一郎]

近代経済学における利潤決定理論

利潤の概念規定については、上記のようにいくつかの説があるが、次に、現在「近代経済学」において支配的な利潤(または利潤率)決定理論についてみてみよう。[大塚勇一郎]
限界生産力説
議論を簡単にするために、所得(または費用)は賃金と利潤の二つの範疇(はんちゅう)に大別され、前者は労働、後者は資本所得であると仮定する(それゆえ利潤のなかには利子が含まれ、資本のなかには企業家才能が含まれることになる。また、土地は無視する)。この場合、企業が利潤率極大行動をとるものとすると、要素価格は各要素の限界生産力に等しくなる。すなわち、利潤率は資本の限界生産力に、賃金率は労働の限界生産力に等しくなる。これは次のように示せる。いまYKLをそれぞれ生産物、資本、労働とし、rwをそれぞれ利潤率、賃金率とする。生産関数を一次同次とすれば、YF(K, L)=rKwLよりyf(k)=rkwが得られる。ただしykは、YKLで除した値である。利潤率は

と表され、したがってこの極大値は、rkで微分することによって

という条件で与えられるが、この左辺は資本の限界生産力を表す。また、賃金率wは、この式から

で与えられるが、これは労働の限界生産力を示す。
 かくして、限界生産力説は、各要素の需要曲線を意味する限界生産力曲線と各要素の供給曲線との交点で、要素価格が決定されると説く。[大塚勇一郎]
ケインズ的理論
これは資本家または利潤からの貯蓄性向(sp)と労働者または賃金所得からの貯蓄性向(sw)が異なるという想定にたって、蓄積率が利潤率を決定するとみる。簡単化のためにsw=0と置くと、利潤(P)からの貯蓄――それは経済全体の貯蓄でもある――はspPで与えられる。したがって、貯蓄=投資(I)の均等よりIspPとなり、この両辺を資本で除すと

が得られる。すなわち蓄積率(左辺)が大きくなればなるほど利潤率(PK)は大きくなる。そして蓄積率自体は、たとえば企業家の将来に対する予想あるいはアニマル・スピリットによって規定される、とみなされる。[大塚勇一郎]

マルクス経済学からみた利潤

マルクス経済学においては、利潤は、剰余価値の転化された現象形態として現れる。
 資本主義的商品価値Wは、消耗された不変資本の価値c、可変資本の価値vおよび剰余価値mからなる。つまりWcvmである。この商品価値のうち、商品生産のために資本家が費やした価値を補填(ほてん)するにすぎない部分cvは、一括して費用価格kを構成する。したがって費用価格の観点からは、v部分が生産過程で新しく付加された価値であり、さらに、剰余価値を伴って創造された価値であるにかかわらずそれが消滅し、その資本主義独自の役割も消滅している。それは、資本家の立場からは、商品の生産のための費用が資本支出(cv)で計られ、その商品の生産に現実に要費している労働支出(cvm)で計られるのではないからである。この関係のもと、すなわち、商品の販売という流通を通じて支出されたものを補填する関係を含むもとでは、剰余価値は単に商品価値のうちの費用価格を超える超過分となる。生産過程の終了後、商品流通から復帰するときには、消費された資本価値全体(cv)の価値増加分にすぎなくなる。
 ところが、投下資本価値全体ということでは、この観点はさらに進んで、剰余価値が投下資本のうち価値増殖過程に入り込む消費された価値部分のみならず、固定資本の非磨滅部分のような生産物に入り込まない部分の増加分ともなる。つまり、現実の労働過程では総資本が機能しているから、剰余価値の形成には全部的に寄与しているとみなされる。こうして剰余価値は、生産に充用された資本全体に対する価値増加分となる。
 この剰余価値である費用価格を超える超過分は、資本が行う生産から生ずるから、生産に投ぜられた資本のいろいろな価値要素から均等に生じたようにみえ、投ぜられた、したがって充用された資本全体から発生しているようにみえるのである。それが生産に投ぜられた資本のどの部分から生ずるかはまったく問われず、また、資本家にとってはどうでもよいことになる。こうして、投ぜられた資本全体に対する剰余価値の比率として利潤率がとらえられる。これは、剰余価値率の転化された形態にほかならないが、この剰余価値率の利潤率への転化を基礎として、剰余価値の利潤への転化が誘導される。利潤率は、事実上、利潤に先だつ歴史的出発点であるが、このように、投ぜられた資本全体の、資本家的に観念された産物としては、剰余価値は費用価格を超える超過分として、利潤pという形態を受け取る。
 利潤は、剰余価値の転化された形態であるが、さしあたりここでは、まだ剰余価値と同じである。ただ、資本家的観念で神秘化されている。といっても、資本主義的生産そのものから必然的に発生してくる形態をとっているのではあるが。商品価値は、いまやWcvmからWkpに転化される。一方で労働力の価値が「労働の価値」としての賃金という転化された形態で現れるのに対し、他方その対極では、剰余価値が利潤という転化された形態で現れる。このように、利潤に転化された形態では剰余価値の起源の全秘密や資本と賃労働の関係が隠蔽(いんぺい)される。だから利潤は、費用価格に対応した、費用価格の超過分という、ふさわしい形態で現れる。したがって、剰余価値と利潤とを混同してはならない。[海道勝稔]
利潤率とその運動
利潤はさしあたり剰余価値と同じ量であっても、利潤率p'は初めから実質的に剰余価値率m'と異なる。

であり、

だから、p'<m'の関係にある。c=0でないからである。さらに

である。利潤率は、年間として計算されると、剰余価値率M'(m'n nは資本の回転数)となるから、

となり、利潤率は、剰余価値率、資本の回転数に正比例し、v/(cv)すなわち資本の有機的構成の高度化に逆比例する。
 ところで、個別的利潤率では剰余価値と利潤とは同じ量であるが、種々の生産部門においては、利潤率の決定要因である剰余価値率、資本の回転、資本の有機的構成は多かれ少なかれ異なっており、商品が価値どおりに販売される限り、価値生産も剰余価値の生産も異なり、部門そのものの個別的な利潤率は異なる。そこで、資本の回転、剰余価値率が一定でも、資本の有機的構成は各部門で異なり、利潤率も異ならざるをえない。
 しかし、異なる利潤率から、各部門間の資本間では、競争により一つの中位的または一般的利潤率が形成される。なぜならば、資本は絶えず有利な利潤率を目ざし、その競争の結果、各生産部門における資本が社会的総資本の部分をなす割合に応じて総剰余価値の可除部分を得るからである。社会的総資本の資本構成と剰余価値は、各生産部門の資本構成の平均=平均的費用価格と剰余価値の平均=平均利潤とからなり、かくして生産価値となるのである。この平均的資本構成と一致する商品価格は価値とも一致し、利潤は剰余価値と一致する。だが、資本構成がより高い部門では、平均利潤を得ている生産価格は商品価値より高く、資本構成が低い部門では、商品価値より低くなる。それは、資本の移動=競争を通じて利潤が平均化され一般化されたからである。
 したがって、すべての商品は、等しい量の資本に対して等しい率の利潤が実現されるような価格で販売される。各部門の資本構成その他の条件いかんを問わず、各部門の資本を集めた総体としては等しい率の利潤を獲得し、各資本は平均利潤を確保する。これは、生産された剰余価値の実現の問題であり、各部門の分配の問題であって、商業利潤も平均利潤に参加するのである。
 このように、商品価値は生産価格となり、利潤は平均利潤となって、量的にも個別的には剰余価値と一致しなくなる。その結果、利潤の本質および起源は完全に隠蔽され、まったく痕跡(こんせき)すら残さなくなり、資本主義的神秘化はさらに推し進められるのである。[海道勝稔]
『J・ロビンソン著、山田克巳訳『経済成長論』(1963・東洋経済新報社) ▽P・ガレニャーニ著、山下博訳『分配理論と資本』(1966・未来社) ▽J・スティグラー著、松浦保訳『生産と分配の理論』(1967・東洋経済新報社) ▽P・A・サムエルソン著、都留重人訳『経済学(原書代11版)』全2冊(1981・岩波書店) ▽L・L・パシネッティ著、宮崎耕一訳『経済成長と所得分配』(1985・岩波書店) ▽K・マルクス著『資本論』第3巻第1篇第1章、第2章(向坂逸郎訳・岩波文庫/岡崎次郎訳・大月書店・国民文庫)』

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世界大百科事典内の利潤の言及

【企業】より

…企業は,この家計や財政にとって必要なものを生産,販売し,それに伴う諸活動を行って,社会の需要を充足し,収益を獲得している。この収益から費用を差し引いた剰余が利潤であり,企業の発展の基礎となるものである。企業は一般に最大利潤の獲得を目的とするといわれているが,企業の究極の目的は,社会の需要を充足することにある。…

【資本】より

…新資本への需要の変動は,有効需要を通じて,景気変動のなかで労働雇用水準がどのように変動するかを決定する。そして新資本の蓄積は利潤の大きさへの影響を通じて所得分配に影響を与える。また逆に新資本の蓄積の大きさを定める社会貯蓄の大きさは所得分配の状態に依存している。…

【資本主義】より

…とくに,資本主義の経済の現代的局面においては,さまざまな新しい要因が現れており,注意しなければならない。
【資本主義の概念】
 資本主義とは,利潤の獲得を第一の目的とした経済活動のことをいう。貨幣が元手として投下され,もうけ(利潤)とともに回収されたとき,貨幣は利潤を生みだす資本として用いられたことになる。…

【資本論】より

…しかし《資本論》の体系の構成からいうと,このイデオロギーの面が,ネガティブに,裏面になっていて,イギリス古典学派の批判的展開としての経済学が,ポジティブに,表面に,出ている形になっている。
[イギリス古典派経済学]
 A.スミスの《国富論》や,D.リカードの《経済学および課税の原理》によって代表されるイギリス古典派経済学は,確立しつつあった資本制商品経済社会の基盤に立って,社会各層の生活の基礎である賃金や利潤,地代などの所得のカテゴリーを,商品価格の構成要素として取り出し,それらの相互関係や運動を,商品の売買(=価格)に働く交換価値法則(労働価値説)によって説明しようとした。こうして資本主義社会の経済的編成とその運動法則を明らかにしようとする経済学の古典的なパラダイムができあがった。…

【ミクロ経済学】より

…企業が販売量を変更することにより価格を変化させることができる場合は不完全競争であり,企業にとって市場価格が変更不能の場合は完全競争である。生産要素の生産への投入量と生産物の産出量の間の技術的関係(生産関数)の許す範囲で,生産物の販売収入と生産要素購入費用の差である利潤を最大にするように,企業は生産物の供給と生産要素の需要を決定する。諸価格が変化すれば,完全競争の場合の需要量,供給量は変化する。…

※「利潤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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