男作五雁金(読み)おとこだていつつかりがね

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「男作五雁金」の意味・わかりやすい解説

男作五雁金
おとこだていつつかりがね

浄瑠璃世話物。8段。1世竹田出雲作。寛保2 (1742) 年大坂竹本座初演。元禄 15 (1702) 年に大坂千日刑場で処刑された雁金文七をはじめ5人の無頼漢題材とする「五人男物」「雁金物」と呼ばれる作品群の代表作。従来の五人男物の要素を吸収しながら,江戸と大坂の2都にまたがって展開させ,中心人物である文七を同名で2人設定するなどの新構想を立てる。また,文七や平兵衛を単なる無頼漢ではなく侠者として美化・理想化し,五人男物を犯罪劇から侠客劇へと脱皮させる兆しをみせ,以後の五人男物の典拠ともなった。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「男作五雁金」の解説

男作五雁金
おとこだて いつつかりがね, おとこずくり いつつかりがね

歌舞伎・浄瑠璃の外題
作者
竹田出雲
補作者
奈河篤助(1代) ほか
初演
寛保2.9(京・中村粂太郎座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の男作五雁金の言及

【俠客物】より

…任俠の徒を劇化した嚆矢(こうし)は1698年(元禄11)に大坂片岡仁左衛門座で初世仁左衛門が演じた団七であるとされ,以降,宿無団七の書替狂言がつぎつぎに演じられた。雁金五人男は1702年9月大坂岡本文弥座上演の人形浄瑠璃《雁金文七秋の霜》が最初で,《男作五雁金(おとこだていつつかりがね)》(1742年7月大坂竹本座,竹田出雲作)など多くの作を生んだ。また上方では黒船忠右衛門,梅の由兵衛など,歌舞伎・人形浄瑠璃に数々の俠客物が生まれたが,一方江戸でも,79年(安永8)7月肥前座所演の人形浄瑠璃《驪山(めぐろ)比翼塚》(源平藤橘ら作)以降の幡随院長兵衛の劇化,また1713年(正徳3)4月山村座《花館愛護桜(はなやかたあいごのさくら)》以降の十八番系の助六劇が盛行し,江戸っ子精神を代表する任俠としてもてはやされた。…

【五人男物】より

…雁金(かりがね)五人男,雲霧(くもきり)五人男,白浪五人男などをいう。雁金文七を頭とした庵(あんの)平兵衛,布袋市右衛門,極印千右衛門,神鳴庄九郎という実在した5人の無頼漢(1702年8月刑死)を,獄門の翌月に岡本文弥座で人形浄瑠璃化した《雁金文七秋の霜》以来《雁金文七一年忌》(山本飛驒掾,1703),《雁金文七三年忌》(宇治加賀掾,1704)と語りつがれたが,《男作五雁金(おとこだていつつかりがね)》(竹田出雲作,1742年7月大坂竹本座)によって,仁俠の徒としての性格が強調され,後世に大きな影響をもたらした。歌舞伎でも1702年(元禄15)に大坂松本名左衛門座で上演,以後17年(享保2)江戸の中村座で《街道一棟上曾我》として演じられ,26年大坂の金子吉左衛門座(中の芝居)で《男作五人組》が,また《名月五人男》(1730年中村座)では五人男が勢ぞろいしてつらねを述べる個所が評判となった。…

※「男作五雁金」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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