改訂新版 世界大百科事典 「町座」の意味・わかりやすい解説
町座 (まちざ)
中世都市域における定住店舗をいう。〈町〉はもともと田の区画を意味するが,同時に都城の条坊の区画や建物の多く集まる所も町と称される。10世紀の辞書《和名抄》では町を〈田区也〉と説明するが,一方で店家(まちや)すなわち〈坐売舎〉について〈俗に町というはこの類〉としている。商店の多く集まる地域が町と称されるようになったのである。京都では町の語がそのまま街路名となっている。修理職町の南に続く街路に沿って商業区域=町が形成されたため,これが町(尻)小路(今の新町)と呼ばれた。また鎌倉でも13世紀初頭に町人をはじめとする商人の人数を定めたことが知られ,商人の中に町に住む商人=町人が含まれていたことがわかる。そのため店舗を営むには町座の権利が必要となる。14世紀中ごろ,販路の拡大を図る綿の振売(ふりうり)商人を,定住商人が〈散在商売において何ぞ座号あるべきや〉と批判したのはこの点である。しかし町の拡大によって商人・町人の区別がなくなるに伴い,町座の観念は営業権一般の中に吸収された。
執筆者:馬田 綾子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報