日本大百科全書(ニッポニカ) 「盗犯防止法」の意味・わかりやすい解説
盗犯防止法
とうはんぼうしほう
「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」の略称。昭和初年の東京市内で出没した「説教強盗」とよばれる強盗事件を契機として、凶悪な強窃盗を防止する目的で1930年(昭和5)に立法された四か条からなる特別刑法である。本法にいう「盗犯等」とは強窃盗のほか、これ以外の住居侵入や不退去をいう。その第1条は、盗犯等に際し、自己または他人の生命、身体、貞操に対する切迫した危険を排除するため犯人を殺傷しても、正当防衛(刑法36条1項)の防衛行為があったものとみなすとともに、前記のような切迫した危険がないにもかかわらず、恐怖、驚愕(きょうがく)、興奮、狼狽(ろうばい)により犯人を殺傷したとしても処罰しない、と規定する。また本法の第2条から第4条は常習的な強窃盗に関し、刑法上の強窃盗に対し法定刑を加重している。ただ、本法に対しては「切捨御免の悪法」であり、あまりにも行きすぎであるとの強い批判がある。
[名和鐵郎]