江戸時代,武士の有した身分的特権の一つ。無礼におよんだ庶民を切害すること,すなわち無礼討の許容である。諸藩でも認められたが,幕府は《公事方御定書》の殺人・傷害の条項中に先例を成文化し,町人・百姓が法外の雑言など不届きな行為に出た場合,やむをえずこれを切り殺した武士は,たとえ足軽などの軽輩であれ,刑事責任なきものとした。事情分明でなければならず,したがって目撃者の存在は欠かせなかった。これらの要件を満たし,身元定かな加害者には,正式な裁判も行われない。支配階級である武士の名誉が侵されたことに対する自力救済の容認であり,斬殺という私的刑罰権を保持せしめたものとも評しうる。実際には,切り捨ててもとどめをささぬ慣行が生じ,抑制もされて,みだりに行われたわけではない。封建的身分秩序を支える決定的な制度であったが,開国後の生麦事件にみられるように破綻(はたん)をきたし,1868年(明治1)の仮刑律には存置せしめた明治政府も,70年の新律綱領に規定せず,翌年あらためて廃止を確認した。
執筆者:加藤 英明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
無礼討とも。近世,武士が農民・町人など庶民の非礼・無礼な言動により名誉を傷つけられた場合,彼らの斬殺を許されたこと。ただし相手を殺傷してもとどめはささないのが慣行であった。また証人を必要とし,事後の取調べでその正当性が立証されなければ裁判をうけ,処罰もされた。武士に対してみずからの名誉・体面を自力で守ることを認めた身分的特権ではあったが,その行使は抑制されていた。
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