日本大百科全書(ニッポニカ) 「相対的分け前」の意味・わかりやすい解説
相対的分け前
そうたいてきわけまえ
relative share
一般的にはある生産要素の所得の全所得に占める比率のことで、分配率ともいうが、経済理論においてとくに問題とされるのは、国民所得に占める労働所得の比率(労働分配率)である。分配論における階級分配の問題にほかならない。
経済理論上有名なのは、完全競争下でコブ‐ダグラス型の生産関数を想定するもので、労働と資本がおのおのの限界生産力に従って所得を得るとき、付加価値総額が分配し尽くされることになる。P・H・ダグラスは『賃金の理論』The Theory of Wages(1934)において、当時のアメリカ製造業の分配をこれを用いて説明した。次にM・カレツキは『経済変動の理論』Theory of Economic Dynamics(1954)において、寡占状態を前提として、第二次世界大戦前後の英米の国民所得における労働分配率が独占度(売上高に占める賃金・原材料費以外のものの比率)で決められていることを実証した。またA・ウッドは『利潤の理論』A Theory of Profits(1975)において、英米の利潤分配率が寡占企業の価格形成原理によって決定されると説明した。一般にいわゆる新古典派は分配率を軽視し、ポスト・ケインジアンは重視する傾向が強い。
[一杉哲也]