国民所得(読み)こくみんしょとく

精選版 日本国語大辞典 「国民所得」の意味・読み・例文・類語

こくみん‐しょとく【国民所得】

〘名〙 一国民経済内で、一定期間に新たに生産される財・サービス価額から中間生産物の価額を差し引いた額。広義には国民総生産同義にも用いられるが、固有には、国民純生産から間接税を差し引いたものを意味する。生産面、分配面、支出面のいずれでとらえるかによって、それぞれ生産国民所得分配国民所得支出国民所得とよばれる。
※現代経済を考える(1973)〈伊東光晴〉I「一九五八年の一人当り国民所得は二五六ドル、一九七〇年の四分の一以下であり」

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デジタル大辞泉 「国民所得」の意味・読み・例文・類語

こくみん‐しょとく【国民所得】

国民純生産から間接税を控除し補助金を加えたもの。生産・分配・支出の三つ側面のいずれでとらえるかによって、それぞれ生産国民所得分配国民所得支出国民所得とよばれるが、理論的にはすべて等価。NI(national income)。

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百科事典マイペディア 「国民所得」の意味・わかりやすい解説

国民所得【こくみんしょとく】

national incomeの訳でNIと略す。一国の経済において過去に蓄積された資本資産を減少させることなく,一定期間(通常1年)に新たに生産・分配・支出されていく財貨とサービスの合計。単なる個人の所得の合計ではなく,なんらかの生産活動によって発生した付加価値の合計であるから,生産活動を伴わない収入(失業保険金,遺産相続収入,公債利子等)は含まない。国民所得は生産・分配・支出の3面でとらえられる。生産国民所得は各産業別に付加価値を合計したもの,分配国民所得は付加価値の帰属に従って勤労所得,個人業主所得,法人所得(社内留保・配当・法人税),財産所得(利子・地代等)等を合計したもの,支出国民所得は消費と投資(資本設備と在庫の増加)等からなる。これらの国民所得は,付加価値を別の視点からとらえたものであるから,互いに等しくなる(三面等価の原則)。測定年度の市場価格で算定した名目国民所得と,物価変動を除くためにこれを物価指数で修正した実質国民所得とがある。1930年代から経済分析や政策の手段として用いられるようになり,日本では戦後,国民所得統計が整備された。→国民総生産新SNA
→関連項目経済成長率国民純生産国民負担率国連分担金社会保障国民負担率乗数理論第三次産業貯蓄・投資バランス・アプローチ分配貿易依存度マーシャルのk労働分配率

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国民所得」の意味・わかりやすい解説

国民所得
こくみんしょとく
national income

ある国の労働者と企業が生産活動に参加したことによって一定期間(四半期、1年など)に受け取った所得の総額を示すもの。賃金総額(雇用者報酬)、企業の利益(営業余剰・混合所得)の合計額として定義される。ここで、国民とは国籍を有しているかどうかを意味するものではなく、その国を拠点として活動している人(居住者)をさす。

 よく似た概念である国民総所得(GNI)と国民所得の関係は以下のとおりである。GNIから、設備などの減価償却費(固定資本減耗)と政府の取り分である間接税(生産・輸入品に課される税から補助金を除いたもの)を差し引いたものが国民所得である。

 なお、以上で説明した国民所得は「要素費用表示の国民所得」ともよばれる。現在の国民経済計算(SNA)においては、これに政府の取り分を加えた「市場価格表示の国民所得」も存在する。2019年(令和1)12月に公表された年次推計(2018年度国民経済計算)によると、2018年(平成30)の要素費用表示の国民所得は401.5兆円、市場価格表示の国民所得は444.4兆円であった。

[飯塚信夫 2020年9月17日]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「国民所得」の解説

国民所得
こくみんしょとく

一国の1年間の経済活動規模を示す統計概念。生産・分配・支出の各面からとらえられるが,支出面から計算するときは消費・総資本形成・輸出入の差額の計となる。これに間接税を加えると国民純生産,さらに資本減耗引当を加えると国民総生産(GNP)となる。時価で表示された名目系列と,一定時の価格で表示された実質系列とがある。近代日本の実質成長率は,大川一司(かずし)の推計によれば,1887~1904年2.65%,04~30年2.95%,30~69年5.33%で,国際的にみて高く,また趨勢加速の様相を呈した。

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世界大百科事典 第2版 「国民所得」の意味・わかりやすい解説

こくみんしょとく【国民所得 national income】

国内総生産(国内総生産・国民総生産)は,居住者である生産者に対する要素サービスの対価として分配されて,被(雇)用者報酬と営業余剰とから成る〈国内要素所得〉を形成する。被用者報酬とは,〈居住者である生産者〉が被用者に対して支払ったすべての現物,および現金の形の賃金・俸給,および上記生産者がその被用者に関して社会保障制度,民間の年金,損害保険,生命保険その他類似の制度に対して支払ったり帰属したりした拠出金を含めた大きさをいう。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「国民所得」の解説

国民所得

サラリーマンの所得や企業利益を含め、国民全体の所得の総額。国民総生産に補助金を加え、そこから間接税、固定資産の消耗分を控除したものが国民所得にあたる。一国の1年間の実質的な生産規模を表す指標。国民所得は生産・分配・所得という3面から把握できる。

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栄養・生化学辞典 「国民所得」の解説

国民所得

 ある期間内に財やサービスによって得られる所得.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国民所得」の意味・わかりやすい解説

国民所得
こくみんしょとく

国民可処分所得」のページをご覧ください。

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世界大百科事典内の国民所得の言及

【経済厚生】より

A.C.ピグーによれば,この経済厚生とは社会を構成する各個人の効用の総和である。しかし,効用の総和を直接に取り扱うことはできないから,彼はそれに対応するものとして国民所得を考えた。そして,(1)国民所得が大きいほど,(2)貧者の受けとる国民所得の分が大きいほど,(3)国民所得の変動が少ないほど,経済厚生は大きいと結論する。…

【三面等価の原則】より

…経済活動の循環のなかでは,国民所得は生産,分配,支出という三つの形態をとる。それらは生産国民所得,分配国民所得,支出国民所得と呼ばれる。…

【所得】より

…そしてこの収入と〈その他の所得〉との和を,所得と呼んで区別する場合がある。
[所得の構成要素]
 何が所得を構成するかを考える場合,国民所得,すなわち社会会計上の所得概念を知ることによって,その他(たとえば税法上)の所得概念と区別することが重要である。ここでは主として国民所得の構成を基本として解説する。…

※「国民所得」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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