日本大百科全書(ニッポニカ) 「矢十字党」の意味・わかりやすい解説
矢十字党
やじゅうじとう
Nyilaskeresztes Párt ハンガリー語
ハンガリー・ファシズムの二つの潮流、正統的ジェントリ・ファシズムと急進的大衆ファシズムとのうち、後者を代表する政党。前者がホルティの権威を後ろ盾として権力の中枢と結合していたのに対して、後者は前者とドイツ・イタリアファシズムとの鬼っ子として法的禁圧をたびたび経験した。党の結成は、1939年にK・フバイがドイツの政治的・財政的援助を取り付けて行ったが、同党が国家主義的・人種主義的矢十字運動全体の主導権を握るに至るのは、サーラシを得て矢十字戦線との合同がなった翌40年9月である。しかし、党は内部対立からすぐに分裂し、ファシズム全体の主流にはなりえなかった。ただし、44年のホルティの戦線離脱後は、最後の親ドイツ派として終戦まで政権を担当した。
[家田 修]
『E・パムレーニ編、田代文雄・鹿島正裕訳『ハンガリー史』(1980・恒文社)』