日本大百科全書(ニッポニカ) 「石篦」の意味・わかりやすい解説
石篦
いしべら
篦状の剥片(はくへん)石器。篦としての用途をもった石器ではないので、篦状石器というのが正しい名称である。北ヨーロッパの旧石器時代末に現れた剥片石器の系統を引くもので、北ユーラシア大陸から東北日本へ、初期櫛目文土器(くしめもんどき)文化の波及によって到達したと考えられる。長さ6センチメートル前後のものが多いが、10センチメートルを超すものもある。幅は上方が狭く、下方が広いものが一般的である。片面だけ加工し断面がかまぼこ形のものと、両面を加工し断面が凸レンズ形のものとがある。北海道南西端部から東北地方北半部では縄文文化早期初頭から晩期にわたり長期間使用され、多くは珪質頁岩(けいしつけつがん)製である。それ以南中部地方北東部までは早期末、前期の遺跡から若干出土している。用途は削具としての木工具であろうと推定される。
[江坂輝彌]