日本大百科全書(ニッポニカ) 「科学と近代世界」の意味・わかりやすい解説
科学と近代世界
かがくときんだいせかい
Science and the Modern World
イギリスの数学者で哲学者A・ホワイトヘッドの著書。アメリカに渡って、ハーバード大学の哲学教授として初めての著作で、1925年に書かれた。彼の著作のなかでおそらくもっとも広く読まれているといえよう。
本書は17世紀の近代科学の発生以降3世紀の間に西欧にみられた「心性の変化」を跡づけたものであるが、同時に、その科学的世界像(とくに物理学の基礎)とそこから生まれた批判を通しての彼自身の形而上(けいじじょう)学的体系(有機体の哲学)へのスケッチともなっている。その主たる批判は、デカルトに始まった「自然の二分岐」bifurcation of nature、すなわち、具体的な体験の世界と、「真の」科学世界的世界との分離にあり、彼は人間の日常生活や感情生活をも包み込む、より普遍的かつ説得的な哲学を目ざしたのであった。
[塚本明子]