日本大百科全書(ニッポニカ) 「税務行政執行共助条約」の意味・わかりやすい解説
税務行政執行共助条約
ぜいむぎょうせいしっこうきょうじょじょうやく
Convention on Mutual Administrative Assistance in Tax Matters
資産の海外移転による脱税や租税回避行為を防ぐ目的で、多国間の税務当局が連携する国際条約。正式には「租税に関する相互行政支援に関する条約」という。多額の納税義務を負う納税者の税務情報を締約国間のネットワークを使って相互に共有し、必要に応じて海外の税務当局へ徴税代行や関連文書送付を要請できる。経済のグローバル化や金融取引の進展で、海外に資産を分散する動きが広がったため、1988年にヨーロッパ評議会や経済協力開発機構(OECD)の加盟国を対象に同条約が成立(1995年発効)した。2010年5月の改正では、ヨーロッパ評議会やOECDの非加盟国も、加盟国の同意があれば条約を締結できるようになった。
日本は長く同条約に未署名で、主要7か国のうち唯一、同条約に加盟していなかった。このため所得隠しなどが判明しても、海外に資産を持ち出されると、十分な徴税ができなかった。しかし「社会保障と税の一体改革」を掲げる日本政府は、マイナンバー制度導入(2016年1月)で所得を把握されることを嫌った納税者による資産の海外移転が加速する恐れがあるとして、2011年(平成23)11月、同条約に署名した。2015年10月時点で、条約に署名した国は72。
[編集部]