日本大百科全書(ニッポニカ) 「立花時勢粧」の意味・わかりやすい解説
立花時勢粧
りっかいまようすがた
いけ花伝書。著者は富春軒仙渓(ふしゅんけんせんけい)。1688年(元禄1)刊。八巻八冊よりなる。その名称からも推察されるように、元禄(げんろく)期(1688~1704)前後の華やかな時代の世相にふさわしいいけ花を目ざして、その理論、花形を述べたものである。全巻は二部に分かれ、草木の出生、立花(りっか)の技法と道具、十三か条の法度(はっと)、立花十徳などの作意や技巧理論を述べた『立花秘伝抄』五冊と作品図による花形説明などの『時勢粧』三冊からなっている。富春軒は池坊(いけのぼう)立花に対抗して新流を目ざした人で、本書も独自の花形を考案し、それを生かしながら型にはまらぬ自由な作意を表現しようとしているが、創意工夫がややもすれば技巧に走りすぎた嫌いがある。
[北條明直]