改訂新版 世界大百科事典 「童蒙先習」の意味・わかりやすい解説
童蒙先習 (どうもうせんしゅう)
朝鮮で李朝時代に作られた初学者のための入門的な教科書。不遇の儒臣,咸陽の人朴世茂(1487-1564)の著で,1541年に成った。17世紀中葉以後書堂の発達に伴って広く行われた。内容は序,五倫,儒学総論,中国および朝鮮の歴代要義(歴史)からなり,分量は17帳226行。音を示す〈吐〉を割注で入れ,好適の〈経史之略〉すなわち最小必要な教育内容(ミニマム・エッセンシャルズ)を成している。1699年刊奎章閣板本には粛宗の序と宋時烈の跋が付されている。日本統治期には朝鮮歴史の部分が当局から嫌われ,1918年の訓令〈書堂規則発布ニ関スル件〉では書堂で教授するのに適当な書籍とは認定されなかったが,部分的削除,変改を加え書名を変更したりした各種異本が各地で数多く刊行され,その普及度は高かった。
執筆者:渡部 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報