出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
中国において,人の重んずべき五つの人間関係をいう。父子の親,君臣の義,夫婦の別,長幼の序,朋友の信をいう。五倫という語は,児童に人の守るべき道を教える,明の沈易の《五倫詩》,また君道,臣道,父道,子道,夫婦の道,兄弟の道,朋友の道について述べた,明の宣宗の御撰《五倫書》に初めて現れる。しかし,その内容としての五つの人倫とそれぞれの徳目は《孟子》に由来する。后稷(こうしよく)を用いて民生を安定させた舜が,つぎに契(せつ)を起用して,〈父子に親あり,君臣に義あり,夫婦に別あり,長幼に序あり,朋友に信あり〉と人倫道徳を教えさせた。これが《礼記(らいき)》では,順序が君臣,父子,夫婦,昆弟,朋友に変わって〈天下の達道五〉にかぞえられ,漢初の《淮南子(えなんじ)》では〈君臣の義,父子の親,夫婦の弁,長幼の序,朋友の際〉と表現されている。五倫の教えは実践道徳として尊重され,朱熹(子)は教育の綱領として掲げ,陸九淵(象山)は内面化して心学を唱えた。日本でも熊沢蕃山の《五倫書》,室鳩巣の《五倫名義》などが述作され,明治の教育勅語にとり入れられた。
執筆者:日原 利国
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儒教において、5種類に整理された人間関係、すなわち父子、君臣、夫婦、長幼、朋友(ほうゆう)。またそれぞれの関係の間でもっとも重要とされる徳、すなわち親、義、別、序、信を含めていう。五教、五典、五常ともよばれる。古く『書経』舜典(しゅんてん)に「五教」の語があり、聖王の権威に託して道徳の普遍性を求め、これを体系化する試みがみえるが、孟子(もうし)(孟軻(もうか))が「(舜(しゅん))契(せつ)をして司徒たらしめ、教ふるに人倫を以(もっ)てす。父子親有り、君臣義有り、夫婦別有り、長幼序有り、朋友信有り」(滕文公(とうぶんこう)上篇)と述べるに至り、「五倫の教え」として確定した。『中庸(ちゅうよう)』ではこれを五達道(ごたつどう)とよび、君臣関係を第一に数える。仁義礼智(ち)信の五常とともに儒教倫理説の根本である。
[廣常人世]
『赤塚忠他編『中国文化叢書2 思想概論』(1968・大修館書店)』▽『宇野精一著『儒教思想』(1984・講談社学術文庫)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ルネサンス期には徳(ラテン語virtus,英語virtue)は男らしい精神的・身体的有能性を特に意味した(ギリシア語のアレテも軍神を意味するアレスArēsと同根語である)。中国では,智仁勇の三徳,仁義礼智信の五常の徳,父子の親,君臣の義,夫婦の別,長幼の序,朋友の信の五倫の徳,日本では,神道の正直,儒教の誠,仏教の慈悲という三元徳が挙げられよう。道徳的生活の道しるべを設定する徳論は,倫理学の最初にではなくて最後に位置すべきものであるが,ニヒリズムが顕在化した現代では,倫理学も徳論までは到達しがたく,元徳も定まりがたい。…
※「五倫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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