五倫(読み)ゴリン

デジタル大辞泉 「五倫」の意味・読み・例文・類語

ご‐りん【五倫】

《「孟子」滕文公上から》儒教で、人の守るべき五つの道。父子の親、君臣の義、夫婦の別、長幼の序朋友ほうゆうの信。五常五教

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精選版 日本国語大辞典 「五倫」の意味・読み・例文・類語

ご‐りん【五倫】

  1. 〘 名詞 〙 儒教で基本となる五つの対人関係。父子・君臣・夫婦・長幼朋友人倫。また、その間にあってそれぞれ守られるべき道。上から順に親・義・別・序・信。五常。五教。
    1. [初出の実例]「義を守て、五倫の道、正して、物に違ず、私の心なきをば世間の正直とす」(出典:万民徳用(1661)四民)

五倫の補助注記

「孟子‐滕文公・上」に見える「教以人倫、父子有親、君臣有義、夫婦有別、長幼有序、朋友有信」による語で、通常五教と呼ばれていたが、のち、「人倫」の語に基づいて五倫といったもの。

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普及版 字通 「五倫」の読み・字形・画数・意味

【五倫】ごりん

人の間での五つの道。五教。〔孟子、文公上〕(ま)た之れを憂へ、(せつ)をして司徒と爲し、ふるに人倫を以てせしむ。子親り、君臣義り、夫り、長幼序り、友信り。

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改訂新版 世界大百科事典 「五倫」の意味・わかりやすい解説

五倫 (ごりん)
Wǔ lún

中国において,人の重んずべき五つの人間関係をいう。父子の親,君臣の義,夫婦の別,長幼の序,朋友の信をいう。五倫という語は,児童に人の守るべき道を教える,明の沈易の《五倫詩》,また君道,臣道,父道,子道,夫婦の道,兄弟の道,朋友の道について述べた,明の宣宗御撰《五倫書》に初めて現れる。しかし,その内容としての五つの人倫とそれぞれの徳目は《孟子》に由来する。后稷(こうしよく)を用いて民生を安定させた舜が,つぎに契(せつ)を起用して,〈父子に親あり,君臣に義あり,夫婦に別あり,長幼に序あり,朋友に信あり〉と人倫道徳を教えさせた。これが《礼記(らいき)》では,順序が君臣,父子,夫婦,昆弟,朋友に変わって〈天下の達道五〉にかぞえられ,漢初の《淮南子(えなんじ)》では〈君臣の義,父子の親,夫婦の弁,長幼の序,朋友の際〉と表現されている。五倫の教えは実践道徳として尊重され,朱熹(子)は教育の綱領として掲げ,陸九淵(象山)は内面化して心学を唱えた。日本でも熊沢蕃山の《五倫書》,室鳩巣の《五倫名義》などが述作され,明治の教育勅語にとり入れられた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「五倫」の意味・わかりやすい解説

五倫
ごりん

儒教において、5種類に整理された人間関係、すなわち父子、君臣、夫婦、長幼、朋友(ほうゆう)。またそれぞれの関係の間でもっとも重要とされる徳、すなわち親、義、別、序、信を含めていう。五教、五典、五常ともよばれる。古く『書経』舜典(しゅんてん)に「五教」の語があり、聖王の権威に託して道徳の普遍性を求め、これを体系化する試みがみえるが、孟子(もうし)(孟軻(もうか))が「(舜(しゅん))契(せつ)をして司徒たらしめ、教ふるに人倫を以(もっ)てす。父子親有り、君臣義有り、夫婦別有り、長幼序有り、朋友信有り」(滕文公(とうぶんこう)上篇)と述べるに至り、「五倫の教え」として確定した。『中庸(ちゅうよう)』ではこれを五達道(ごたつどう)とよび、君臣関係を第一に数える。仁義礼智(ち)信の五常とともに儒教倫理説の根本である。

[廣常人世]

『赤塚忠他編『中国文化叢書2 思想概論』(1968・大修館書店)』『宇野精一著『儒教思想』(1984・講談社学術文庫)』

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百科事典マイペディア 「五倫」の意味・わかりやすい解説

五倫【ごりん】

古来中国で説かれる人間関係上の五つの徳目で,父子の親,君臣の義,夫婦の別,長幼の序,朋友(ほうゆう)の信をいう。五常とともに道徳の基本とされ,古く《孟子》に説かれたが,五倫の名でまとめられたのは明代。日本では学派にかかわらずに用いられ,熊沢蕃山の《五倫書》など,これを書名としたものも多く,教育勅語にとり入れられている。
→関連項目孟子

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「五倫」の意味・わかりやすい解説

五倫
ごりん
Wu-lun

儒教で説く5つの基本的実践徳目。君臣の義,父子の親,夫婦の別,長幼の序,朋友の信をいう。『孟子』に由来する。

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世界大百科事典(旧版)内の五倫の言及

【徳】より

…ルネサンス期には徳(ラテン語virtus,英語virtue)は男らしい精神的・身体的有能性を特に意味した(ギリシア語のアレテも軍神を意味するアレスArēsと同根語である)。中国では,智仁勇の三徳,仁義礼智信の五常の徳,父子の親,君臣の義,夫婦の別,長幼の序,朋友の信の五倫の徳,日本では,神道の正直,儒教の誠,仏教の慈悲という三元徳が挙げられよう。道徳的生活の道しるべを設定する徳論は,倫理学の最初にではなくて最後に位置すべきものであるが,ニヒリズムが顕在化した現代では,倫理学も徳論までは到達しがたく,元徳も定まりがたい。…

※「五倫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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