内科学 第10版 「糖原病VII型病)」の解説
糖原病VII型 (Tarui(垂井)病)(糖原病(グリコーゲン病))
病因
解糖系における律速酵素であるホスホフルクトキナーゼの欠損による.本症では,3種類存在するサブユニットのうち筋型ホスホフルクトキナーゼ(PFKM遺伝子によってコードされる)が遺伝的に欠損しており,筋や赤血球中の解糖系が障害され,発症する.垂井清一郎によって初めて報告された.
病態生理
ホスホフルクトキナーゼは解糖系における律速酵素でフルクトース-6-リン酸をフルクトース-1,6-二リン酸に変換する.筋型(M型),肝型(L型),血小板型(P型)の3種類のサブユニットが種々の四量体を形成する.各サブユニットは異なった遺伝子にコードされている.筋型サブユニットは,筋で相同四量体を形成しているほか,赤血球では,肝型サブユニットとほぼ等量ずつ発現しており,5種類の四量体を形成している.本症では筋型サブユニットが欠損しているため筋と赤血球中での解糖系が障害され,筋症状や溶血を引き起こす.
臨床症状
小児期から易疲労性,筋痛,有痛性筋攣縮を認め,休息すると回復することが特徴的である.成人例では約半数の症例で激しい運動後にミオグロビン尿を呈し,腎不全に移行する例もある.
検査成績
ミオグロビン尿を認めない時期でも,血清CK高値.溶血の亢進により網状赤血球の増加,間接ビリルビンの軽度上昇をみるが,貧血は認めない.ATP産生障害が起こるため,プリン体の異化が亢進し高尿酸血症を呈する.筋電図は正常ないし筋原性変化を示し,神経伝導速度には異常がない.阻血下前腕運動試験で血中乳酸の上昇を欠き,アンモニア値の上昇を示す.筋症状と溶血が起こる.筋中のグリコーゲンの蓄積程度はさほど強くない.
診断
生検筋でホスホフルクトキナーゼ活性の低下とグリコーゲン含量の増加を証明する.高頻度変異がないため,遺伝子診断は難しい.
治療・予後
激しい運動を避ける.一般に予後は良好.[松原洋一]
■文献
Kishnani PS, Koeberl D, et al: Glycogen storage diseases. In: The Online Metabolic and molecular Bases of Inherited Disease, (Valle D, Beaudet AL, et al eds). http://www.ommbid.com/OMMBID/the_online_metabolic_and_molecular_bases_of_inherited_disease/b/abstract/part7/ch71
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報