内科学 第10版 「糖原病XI型」の解説
糖原病XI型(Fanconi-Bickel症候群)(糖原病(グリコーゲン病))
病因
肝,膵β細胞,腎,腸管上皮に存在し,グルコースなどの六単糖を輸送するグルコース輸送体GLUT2の障害による.SLC2A2遺伝子によってコードされている.
病態生理
GLUT2の障害によって肝臓への糖の取り込みが減少し,さらに高血糖に対する膵β細胞の感受性が低下するため,食後高血糖をきたす.逆に,空腹時には肝からの糖放出が低下し,腎での糖再吸収不全が起こり低血糖を招く.腎では,アミノ酸,カルシウム,リン酸などの再吸収も阻害され,汎アミノ酸尿,代謝性アシドーシス,骨代謝障害を示す.
臨床症状
乳児期より,肝腫大,成長障害,くる病,骨変形・骨折を呈する.
検査成績
空腹時低血糖,近位尿細管障害,アミノ酸尿,リン酸尿,尿糖が認められる.骨X線でくる病の所見.
診断
遺伝子診断が有用.
経過・予後
肝腫瘍の報告はなく腎不全への進展もまれであり,一般に予後良好である.
治療
糖原病Ⅰ型に準じた頻回食が基本となる.コーンスターチ療法などで夜間の低血糖を防ぐ.また,電解質補充,アシドーシスの補正,ビタミンD製剤の投与を行う.[松原洋一]
■文献
Kishnani PS, Koeberl D, et al: Glycogen storage diseases. In: The Online Metabolic and molecular Bases of Inherited Disease, (Valle D, Beaudet AL, et al eds). http://www.ommbid.com/OMMBID/the_online_metabolic_and_molecular_bases_of_inherited_disease/b/abstract/part7/ch71
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報