腎性糖尿

内科学 第10版 「腎性糖尿」の解説

腎性糖尿(近位尿細管疾患)

(5)腎性糖尿(renal glycosuria or renal glucosuria)
概念
 腎性糖尿とは,近位尿細管の機能障害により,血糖値が正常域にもかかわらずグルコース(ブドウ糖)が尿中に排泄される病態をいう.
病態生理
 狭義の腎性糖尿では,腎尿細管におけるグルコース再吸収機構のみが障害され,腎に局在するNa-d-glucose cotransporter(SGLT)2の遺伝子変異による障害と考えられている.常染色体劣性遺伝を示す.広義の腎性糖尿には,先天性グルコース-ガラクトース吸収不全症,Fanconi症候群,腎糸球体疾患などの腎性糖尿をきたす疾患が含まれる.血中のグルコースは糸球体基底膜から完全に濾過されるが,そのほとんどが近位尿細管で,残りが集合管で再吸収されるため尿中には出現しない.腎性糖尿は,近位尿細管におけるグルコース再吸収機構の障害に起因すると考えられている.
臨床症状
 狭義の腎性糖尿では,一般に無症状である.長時間の飢餓によって低血糖ケトーシスを呈し得るが,腎や他臓器の機能障害は呈さない.
診断
 糖尿病との鑑別が最も重要で,糖負荷試験(OGTT)で血糖値が正常範囲内にもかかわらず尿糖陽性となることより診断される.近位尿細管からのグルコースの再吸収をみる指標として,TmG(maximal tubular reabsorption of glucose:グルコース尿細管再吸収極量)があり,腎性糖尿の病型診断に用いられる.ほかの近位尿細管障害を伴っているかどうか(Fanconi症候群)を鑑別する必要もある.腎性糖尿以外に腸管での糖吸収障害と下痢がある場合は,グルコース-ガラクトース吸収不全症(SGLT1の異常)も考慮しなければならない.
治療
 狭義の腎性糖尿では,特に治療を要さない.[寺田典生]

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家庭医学館 「腎性糖尿」の解説

じんせいとうにょう【腎性糖尿】

 血糖(けっとう)は高くないにもかかわらず、尿に糖がおりる状態で、糖尿病(とうにょうびょう)ではありません。正常では、腎臓で濾過(ろか)されたぶどう糖の90%が近位尿細管(きんいにょうさいかん)で、残りはそれ以遠で再吸収され、尿中にはほとんど排泄(はいせつ)されません。血糖値がある程度以上高くなると、濾過されてくる尿糖量が多くなりすぎ、再吸収が追いつかなくなり、尿に糖が漏(も)れて出てきます。尿に糖がもれ出る血糖値を腎の血糖排泄閾値(けっとうはいせついきち)といい、ふつうは1dℓあたり160mg前後にあります。
 腎性尿糖症では、この血糖排泄閾値が低く、血糖値が高くないのに尿中に糖が出てくるわけです。しかし、腎性糖尿の人も将来糖尿病になる確率は、一般人口での確率と変わりないため、毎年の健康診断で尿糖が出た場合は、めんどうでも必ず血糖検査も受け、糖尿病でないことの確認をしておくほうが安全でしょう。

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世界大百科事典(旧版)内の腎性糖尿の言及

【再吸収】より

…一方,血中の濃度が正常範囲であっても,尿細管の輸送系の発達が先天的に悪かったり,輸送系がなんらかの原因で障害されて働く輸送系が少なくなっている人では,再吸収が不十分となるため,尿中に糖やアミノ酸が排出されるようになる。そのような場合を腎性糖尿,腎性アミノ酸尿という。先天的な腎性アミノ酸尿の場合は,中性アミノ酸のみの再吸収不良,塩基性アミノ酸のみの輸送欠損,グリシンやイミノ酸の再吸収不良の三つのタイプがみられる。…

※「腎性糖尿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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