近世初期流行歌謡。三味線伴奏の流行歌曲中,その詞章を明らかにしうる最古典としては,〈弄斎節〉〈片撥(かたばち)〉などと,この〈ほそり〉とがある。寛永(1624-44)ころから流行。〈声の細り〉が特色であるため,この名がつけられたとも,西国巡礼歌から出たものともいわれる。〈ノウサテ〉という間投辞がある点が特色。〈ほそりのヤレ出所は大和の壺坂この節を直すにゃノウサテ……〉という詞章のものなどが代表的なものとされるが,この詞章は,山梨県民謡《道志ほそり》として遺存する。〈忍ぶ細道に松と胡桃……〉の歌が本歌であろうともされるが,この詞章は,三味線組歌奥組の《細り》(組歌中唯一の三下り曲)の第1歌にとり入れられ,また,柳川流破手組の《下総(しもうさ)細り》の第7歌(野川流《紅(くれない)》の第5歌)でもある。なお,《下総細り》の第5・6歌(《紅》の第3・4歌)は,前述《道志ほそり》としても行われている。ほかに,〈関東ほそり〉と題するものもある。
執筆者:平野 健次
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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