細蟹の(読み)ササガニノ

デジタル大辞泉 「細蟹の」の意味・読み・例文・類語

ささがに‐の【×蟹の】

[枕]
蜘蛛くもの意から、「蜘蛛」また同音の「雲」「曇る」にかかる。
「―くものふるまひ哀れなり」〈玉葉集三〉
「―曇らぬ空に雨のみぞ降る」〈後拾遺・雑三〉
蜘蛛の糸の意から、「糸」また同音の副詞の「いと」および「いとふ」などにかかる。
「―いとかくまでは思はざりしを」〈実方集〉
「―厭はれながらかかる契りは」〈風雅・恋四〉
蜘蛛の「」というところから、「い」を頭音とする「今」「命」などにかかる。
「―今はと限るすぢにても」〈かげろふ・中〉
「―命を今は何にかけまし」〈後拾遺・恋三〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「細蟹の」の意味・読み・例文・類語

ささがに‐の【細蟹の】

  1. ( 「ささがに」は蜘蛛(くも)異名 )
  2. 「蜘蛛(くも)」にかかる。
    1. [初出の実例]「我が背子が来べき宵也ささがにのくものふるまひかねてしるしも〈衣通姫〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋四・一一一〇)
  3. 「蜘蛛」と同音の語または同音を含む「蜘蛛手(くもで)」「雲」「曇る」などにかかる。
    1. [初出の実例]「思ひやる我が衣手はささがにのくもらぬ空に雨のみぞ降る〈東三条院〉」(出典:後拾遺和歌集(1086)雑三・一〇〇三)
  4. 蜘蛛の糸というところから、「糸」および「糸」と同音または同音を含む副詞「いと」や動詞「いとふ(厭)」などにかかる。
    1. [初出の実例]「恋しくもおもほゆるかなささがにのいととけずのみ見ゆるけしきに」(出典:落窪物語(10C後)一)
    2. 「絶えねばと思ふも悲しささがにのいとはれながらかかるちぎりは〈藤原為家〉」(出典:風雅和歌集(1346‐49頃)恋四・一三一八)
  5. 蜘蛛の「い」(巣・網の意)というところから同音を語頭に含む「いかさま」「いかなり」「いづこ」「命」「今」などにかかる。
    1. [初出の実例]「ささがにのいづこともなく吹く風はかくてあまたになりぞすらしも」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)

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