デジタル大辞泉 「蜘蛛手」の意味・読み・例文・類語 くも‐で【蜘=蛛手】 1 クモの足のように、1か所から四方八方に分かれていること。また、そういうもの。「万国旗や提灯の―に張りわたされた下に」〈万太郎・大寺学校〉2 (「に」を伴って副詞的に)あれこれと心の乱れるさま。「―に思い屈する時」〈露伴・風流仏〉3 材木などを四方八方に打ち違えて組んだもの。「ある障子の上に、―結うたる所あり」〈平家・二〉4 四方八方に駆け巡ること。また、刀剣などを、四方八方に振り回すこと。「竪様、横様、―、十文字に駆け破わり駆け回り戦ひけるが」〈平家・八〉 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「蜘蛛手」の意味・読み・例文・類語 くも‐で【蜘蛛手】 〘 名詞 〙[ 一 ] ( 蜘蛛が足を八方に広げた形から ) 物が四方八方に分岐したさまをいう。① 川や道などが四方八方に枝分かれしていること。また、その分岐点。[初出の実例]「そこを八橋といひけるは、水ゆく河のくもでなれば、橋を八つわたせるによりてなむ」(出典:伊勢物語(10C前)九)② 放射状をした物。(イ) 木や竹などを打ち違えに組んだ様子。また、その格子、柵の類。[初出の実例]「ある障子のうへに、蜘手結うたる所あり」(出典:平家物語(13C前)二)(ロ) 橋の梁(はり)、桁(けた)を支えるために、橋脚から斜めに渡した筋交いの支柱。[初出の実例]「並み立てる松のしづ枝をくもでにてかすみ渡れる天の橋立〈源俊頼〉」(出典:詞花和歌集(1151頃)雑上・二七四)(ハ) 扇の要(かなめ)と地紙との間の骨が放射状に見える部分。[初出の実例]「扇をたててはかなめを射るとは申せども、かなめの辺はめづらしからず、くもでの辺をあそばせ」(出典:幸若・なすの与市(室町末‐近世初))(ニ) 鷹や隼(はやぶさ)の部分の名称。あしからあしゆびが分かれている付け根の内側をいう。[初出の実例]「くもて」(出典:養鷹秘抄(15C前か))(ホ) 照明に用いた灯台、行灯(あんどん)の油皿を支える台。また、手水鉢や水桶などを載せる台。[初出の実例]「切燈台、白木にて上はくも手にして」(出典:随筆・貞丈雑記(1784頃)八)③ 四方八方に駆け回ること。また、刀や棒などを打ち違えに振り回す動作。→蜘蛛手十文字。[初出の実例]「我命の続かんだけかたはし撫切(なでぎり)拝打(をがみうち)、くもで、輪違、十文字」(出典:浄瑠璃・平仮名盛衰記(1739)一)[ 二 ] ( 「に」を伴って副詞的に用いる )① 四方八方に。八重十文字に。[初出の実例]「花すすきくもでに人に結ばれていつかとくると待つぞはかなき」(出典:小大君集(1005頃))② あれこれとさまざまに思案をめぐらすさま。[初出の実例]「もし男などに具してきたるにやなど、くもでに思ひ乱るるほどに」(出典:大和物語(947‐957頃)二条家本附載) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例