…搢(縉)は挿,紳は帯を意味し,官位にある者の象徴である笏を帯に挿していた官吏の代称であったが,近代日本ではジェントルマンgentlemanの訳語として,1879年ころから使われはじめ,やがて定着した。明治初年にはこの言葉はヨーロッパでも特定の身分層をさす概念から,粗野な振舞いのない穏やかで洗練されたマナーの,比較的上層の士を意味する概念になっていたが,日本でも,たとえ官尊民卑の風潮があるとはいえ,四民平等の時代に対応して,上流の官員と商人の双方を一括して呼ぶ適当な言葉として登場,とくに商人については〈紳商〉と呼ばれた。紳士の条件は内面的な品位の高さにあるが,外面から識別できる標識として,立派な身なりが求められる。…
※「紳商」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」