日本大百科全書(ニッポニカ) 「経営社会政策」の意味・わかりやすい解説
経営社会政策
けいえいしゃかいせいさく
Betriebssozialpolitik ドイツ語
資本主義経営が自らの内部に生じる社会的諸問題を、国の社会政策(社会的経営政策)に依存することなく、自らの責任と方策によって解決すること。経営内に生じる社会的諸問題とは、労働者の生産手段の非所有、分業システムの精緻(せいち)化、機械化の進展、労働の機械リズム化などによる人間性疎外が原因となって生じる種々の対立や紛争をいう。ドイツの経営社会学者ブリーフスGoetz Briefs(1889―1974)は、かかる人間性疎外を、(1)所有物疎外(非所有による啓発機会の喪失と目標からの孤立感)、(2)作業疎外(単調感、歯車意識、無力感)、(3)職場疎外(非人間的作業環境)、(4)従業者疎外(仲間意識の希薄化と人間関係の浅薄化)に四分した。この分類に従えば、経営社会政策は四つの体系をもつことになる。所有物疎外に対する所有参加(従業員持株制度など)や成果分配(利潤分配制度など)、作業疎外に対する職務拡充や目標管理、職場疎外に対する作業環境・労働条件の人間化、従業者疎外に対する人間関係管理や小集団方式などである。経営社会政策という表現はドイツ的であり、一般の経営用語では、労務管理や労使関係にまたがる問題領域となる。
[森本三男]