企業があらかじめ定められた一定の計算基準により、利潤の一部を賃金以外の付加的給付として従業員に分配する制度。その目的は、従業員を企業と共通の利害関係にたたせ、労使協調を強化する、行動と成果の関連を実感させ、創意・工夫・能率向上を刺激する、一体感・帰属感をもたせ、定着率を向上させるなどである。分配総額の決め方としては、〔1〕利潤総額の一定割合相当額、〔2〕配当金総額の一定割合相当額、〔3〕利潤総額から株式への特定配当率相当額を控除した残額全部、〔4〕同上の残額を労使間で折半した額などがある。分配の方法には、現金制、繰延べ制、混合制の3種がある。現金制は、自己への分配利潤を単なる臨時給与として理解し、利潤分配制の意義を忘失させる欠陥がある。繰延べ制は、各従業員への分配額を信託基金の個人別勘定口座に振り込み、退職や廃疾等の特定時に支払うものである。混合制は、現金制と繰延べ制の併用である。現在、利潤分配制のもっとも普及しているアメリカでは、繰延べ制が多い。利潤分配制を付加価値分配制や従業員持株制と混同してはならない。前二者は成果(フロー)の分配であるのに対し、持株制は資本(ストック)への所有参加である。しかし前二者は、利潤と付加価値のように分配原資を異にしている。利潤分配制の歴史は長いが、そのわりに普及していない。利潤の額が変動して効果が不安定なためである。
[森本三男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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