結晶世界(読み)けっしょうせかい(その他表記)The Crystal World

日本大百科全書(ニッポニカ) 「結晶世界」の意味・わかりやすい解説

結晶世界
けっしょうせかい
The Crystal World

イギリスSF作家J・G・バラードの地球終末テーマのSF(1966)。はるか遠隔のどこかの島宇宙反物質銀河系が他の銀河系と衝突し、その結果、宇宙全体で時間が消え始め、その影響は徐々に太陽系にまで及んできた。アフリカマイアミなどでは人や物が宝石化したように結晶し、きらきらと妖(あや)しい光を放つようになる。結晶化することによって物質は永遠の時間の中に閉じ込められるのである。こうした異常事態、外宇宙に発生した大変動に対応する人間の内宇宙のアイデンティティがさまざまな登場人物を通して鋭く剔抉(てっけつ)される。1960年代イギリスのニュー・ウェーブ運動を代表する作品。

厚木 淳]

『中村保男訳『結晶世界』(創元推理文庫)』

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関連語 創元推理文庫

デジタル大辞泉プラス 「結晶世界」の解説

結晶世界

英国の作家J・G・バラードの長編SF(1966)。原題《The Crystal World》。星雲賞海外長編部門受賞(1970)。

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世界大百科事典(旧版)内の結晶世界の言及

【バラード】より

…テクノロジー社会に生きる人間の意識の問題を扱った新しい作風によって,〈新しい波〉(ニュー・ウェーブ)と呼ばれるSFの改革運動を起こし,その中心的役割を果たした。《結晶世界》(1966)は,無意識が直接現実世界と対話していくような独特の手法で地球終末をとらえた初期の傑作であり,《残虐行為展覧会》(1970)は現実的因果律を無視して過去から未来までを同時制に扱った前衛的作品。《コンクリートの島》(1974)は現実世界の中の無意識のブラックホールにとらえられた人間の物語。…

※「結晶世界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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