アイデンティティ(読み)あいでんてぃてぃ(英語表記)identity

翻訳|identity

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイデンティティ」の意味・わかりやすい解説

アイデンティティ
あいでんてぃてぃ
identity

個物や個人がさまざまな変化や差異に抗して、その連続性、統一性、不変性、独自性を保ち続けることをいう。哲学用語としては「同一性」あるいは「自己同一性」に同じ。同一律「AはAである」によって端的に表現される。社会心理学上の用語としては、1950年代にアメリカの精神分析学者E・H・エリクソンが特有の含蓄をもった概念として用いて以来、広く人間諸科学のキーワードとして定着した。彼によれば、アイデンティティとは「自己確立」ないしは「自分固有の生き方や価値観の獲得」にほかならない。ここでいう「自己」とは、内省によってみいだされる主観的自己であるよりは、社会集団のなかで自覚され、評価される社会的自己のことである。個人は共同体の固有の価値観に自己を同一化し、そのなかでさまざまな社会的役割を積極的に引き受けることによって自己を確立する。これら複数の役割的自己を統合する根源的な自己のことを、エリクソンは「人格同一性」あるいは「自我同一性」とよぶ。

[野家啓一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アイデンティティ」の意味・わかりやすい解説

アイデンティティ
identity

自己同一性などと訳される。自分は何者であるか,私がほかならぬこの私であるその核心とは何か,という自己定義がアイデンティティである。何かが変わるとき,変わらないものとして常に前提にされるもの (斉一性,連続性) がその機軸となる。アイデンティティの問題は,常に心理・社会的,心理・歴史的であり,個人史においてはとりわけ青年期に顕在化するが,1960年代の黒人解放運動,第三世界の自己解放運動の中でも重要な役割を果たしてきた。

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