化学辞典 第2版 「繊維構造」の解説
繊維構造
センイコウゾウ
fiber structure
繊維や配向結晶化させた高分子に現れる分子鎖が配向した高次構造.繊維などを製造するときに加えられる応力方向に分子鎖が配向(繊維長さ方向:繊維軸)して結晶化し,配向した微結晶と配向した非晶分子鎖などの集合体からなる高次構造が形成される.ここで,繊維軸方向に結晶が一軸対称(円筒対称)的に配向した構造が形成される場合と,結晶軸が傾き,らせん状に配向した繊維構造が形成される場合とがある.結晶格子を形成する分子鎖の長さ方向の周期を繊維周期とよぶ.合成高分子における繊維構造の結晶部分は折りたたみ分子鎖によるラメラで構築されている場合が多く,非晶部分はこのラメラ間を結んでいるタイ分子などで構築されている.繊維の力学的性質は,この結晶部分の割合(結晶化度)とタイ分子の割合とその緊張度に大きく依存する.麻,綿などの天然高分子における繊維構造は房状ミセル構造を形成しており,とくに羊毛などは複雑な繊維構造を形成している.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報