日本大百科全書(ニッポニカ) 「翡翠釉」の意味・わかりやすい解説
翡翠釉
ひすいゆう
陶磁器の釉(うわぐすり)の一種。別名を孔雀(くじゃく)釉、青(せい)釉ともいう。炭酸銅を呈色剤に用いた低火度釉で、明るい青緑色を呈し、透明性が深く、細かな貫入(かんにゅう)が現れる。11世紀ごろにイスラム圏で発明され、そのトルコ・ブルーの釉色が一世を風靡(ふうび)したのち中国に伝わり、明(みん)代前期の14世紀末には華北の窯(かま)で始められた。16世紀初頭の正徳年間(1506~22)には江南の景徳鎮窯(けいとくちんよう)でも開発されて法花(ほうか)とよばれる三彩釉の一釉となり、華北の磁州窯では白釉地にさらにこの翡翠釉が施されて一時期流行した。西洋に輸出されてキングフィッシャー・ブルーとよばれたが、日本では江戸後期に中国陶磁に倣って試みられている。
[矢部良明]