聖なるもの(読み)せいなるもの(その他表記)Das Heilige

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「聖なるもの」の意味・わかりやすい解説

聖なるもの
せいなるもの
Das Heilige

ドイツのプロテスタント神学者 R.オットー主著。 1917年刊。著者は当時の合理的自由主義神学に対して,宗教における理性以外の要素重視,神の絶対他者性を「おののかせる秘義」とし,それに対する人間の根源的情動を,そこから逃れようとする「拒否」と,そこへ引寄せられる「魅惑」との入り交ったものとしてとらえ,これらを総括して聖 das Numinoseと呼んだ。本書は非合理的な宗教体験の哲学的・心理的分析の試みとして現代の宗教研究に大きな影響を及ぼした。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の聖なるものの言及

【恐れ】より

…実際の危険ではない想像上の危険でも,人は恐れを感じるが,いずれの場合でも,対象がはっきりしている時には恐れ,対象が漠然としている時には不安とよぶのが通例である。根源的恐れとしては,宗教的体験による情動として,R.オットーが,その著《聖なるもの》(1917)で,宗教的感情を分析し,神の力や意志,または聖なる力を意味するラテン語のヌーメンnumenから,ヌミノーゼNuminose感情という言葉を作り,その基底に相反する1対の感情が存在することを明確にした。それが畏怖(トレメンドゥムtremendum)と魅惑(ファスキナンスfascinans)であり,心理学者のユングは,人間が心の深奥にある元型にふれる時に,この根源的恐れと魅惑を感じると述べている。…

【オットー】より

…宗教の本質と真理を学問的に把握することを課題とし,人間の内的直感や予感を方法としてその解明に向かっていった。ルター,カント,シュライエルマハー,フリースJ.F.Fries,デ・ウェッテW.M.L.De Wetteの影響を受け,主著《聖なるもの》(1917)などで宗教を他の事物から説明せず,それ独自の事態として理解し,そこに〈聖なるもの〉〈ヌミノーゼNuminose的なもの〉の存在を認めた。聖なるものの言い尽くしがたさや神的なものの非合理的,神秘的側面を明らかにした点にその特徴がある。…

※「聖なるもの」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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