六訂版 家庭医学大全科 「胃肉腫」の解説
胃肉腫
いにくしゅ
Gastric sarcoma
(食道・胃・腸の病気)
どんな病気か
胃の
間葉系腫瘍(GIMT)には、神経の特徴をもった神経系腫瘍と平滑筋の特徴をもった平滑筋系の腫瘍があります。原則として神経の特徴も平滑筋の特徴もないものをGISTと呼びます。GISTは多かれ少なかれ悪性腫瘍としての特徴をもちますが、悪性度は超低リスク、低リスク、中リスク、高リスクの4段階に分類され、「良性」「悪性」の2段階にはっきり分けられるものではありません。
原因は何か
原因は不明ですが、GISTの約90%に細胞を増殖させる遺伝子(c-kit遺伝子)の機能を伴った突然変異が認められます。何らかの原因でc-kit遺伝子が突然変異を起こし、細胞増殖が過剰に起こることが重要と考えられています。
症状の現れ方
多くの胃肉腫は、胃がん検診の際に無症状で見つかります。気がつかないで大きくなると胃の痛み、不快感、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹部
検査と診断
胃肉腫の診断には上部消化管の造影検査と内視鏡検査、超音波内視鏡検査、腹部超音波検査、腹部CT検査が有用です。上部消化管の造影検査と内視鏡検査では、胃粘膜下腫瘍として診断され、超音波内視鏡検査、腹部超音波検査、腹部CT検査で胃の外からの
悪性リンパ腫は胃がんよりも診断が難しいこともありますが、繰り返し内視鏡検査を行い、組織の一部をとって顕微鏡で調べることで診断がつくことが多いです。間葉系腫瘍では手術で腫瘍を切除し、特殊な染色を行った顕微鏡検査で、初めて最終的な診断が得られます。
治療の方法
悪性リンパ腫は、抗がん薬による化学療法で治療することが多くなります。間葉系腫瘍は切除することで診断と治療を同時に行います。
間葉系腫瘍はリンパ節転移を起こすことはまれです。リンパ節転移を起こしている場合は、かなり進んだ腫瘍であることが多く、リンパ節を切除しても治療効果は不明です。したがって原則としてリンパ節を切除せず、腫瘍の部分をまるごと切除して胃は残す場合が多いです(胃局所切除術)。ただし胃の入り口(
前述したc-kit遺伝子をもった腫瘍が再発(肝臓転移や腹膜転移が多い)した場合には、イマチニブという薬が腫瘍を抑え込むのに有効な場合が多いです。
病気に気づいたらどうする
悪性リンパ腫の診断がつけば、血液内科の専門医に相談します。また、がん検診などで胃粘膜下腫瘍として診断されることが多いのですが、胃粘膜下腫瘍には肉腫のほかにカルチノイドのような上皮性の腫瘍や、
腫瘍ができた場所などにもよりますが、胃粘膜下腫瘍で手術を考慮するのは2㎝が目安になるので、2㎝の大きさがあれば専門医に相談しましょう。
吉田 昌, 才川 義朗, 北島 政樹
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報