内科学 第10版 「胆管結石に対する治療」の解説
胆管結石に対する治療(内視鏡的インターベンション)
胆管結石を除去する際には,経乳頭的にアプローチする方法と経皮経肝的にアプローチする方法がある.経乳頭的にアプローチする場合には,内視鏡的乳頭切開術または,内視鏡的乳頭バルーン拡張術を用いる.経皮経肝的にアプローチする場合には,経皮経肝的胆道鏡を用いる.通常は,まず経乳頭的なアプローチを検討し,それが難しい場合に経皮経肝的アプローチが選択される場合が多い.
a.内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy:EST)
総胆管に挿入したパピロトームを用いて,高周波電流で十二指腸乳頭部を切開する方法である.乳頭切開後,バスケットカテーテルにより結石を把持して摘出する.総胆管結石の除去のほか,急性閉塞性胆管炎,急性胆石膵炎などの際にも有用である.しかし,出血や穿孔などの偶発症のリスクを伴うことや,術後に逆行性胆道系感染を起こしやすくなることが問題である.
b.内視鏡的乳頭バルーン拡張術(endoscopic papillary balloon dilation:EPBD)
乳頭部を切開する代わりに,拡張用バルーンで拡張する方法である.総胆管結石の除去のほか,経口膵胆管鏡検査の前準備に用いられる.術後の急性膵炎のリスクが若干高くなることが問題であるが,出血や穿孔はほとんどなく,乳頭機能も温存できるため,術後の逆行性胆道感染などのリスクを軽減できる.
c.経皮経肝的胆道鏡(percutaneous transhepatic cholangioscopy:PTCS)
経皮経肝胆道ドレナージ(percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD)の瘻孔を介して胆管内に細径の内視鏡を挿入する方法である.内視鏡を用いて胆管結石を除去するが,瘻孔より結石が大きいときには,電気水圧砕石法(electrohydraulic lithotripsy:EHL)やレーザーにより細かく砕いた後に回収する必要がある.高齢者や合併症のため手術不能な例や,経乳頭的アプローチが困難な例,肝内結石が合併した例が適応となるが,出血傾向や高度の腹水がある症例では禁忌である.[矢作直久]
■文献
日本胃癌学会編:胃癌治療ガイドライン(医師用),2010年10月改訂第3版,金原出版,東京,2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報