脊髄出血

内科学 第10版 「脊髄出血」の解説

脊髄出血(脊髄の血管障害)

(3)脊髄出血(hematomyelia)
概念
 頭蓋内出血と同様に出血の部位によって硬膜下・硬膜外出血,くも膜下出血,実質内出血に分類される.また原因によって外傷性や腹圧性,腫瘍性,血管奇形性,特発性などに分類される.硬膜下・硬膜外出血は急性のspace occupy legionにより脊髄圧迫性の病態となり,胸椎部に多いため激烈な背部痛と急性の下肢麻痺で発症する.これに対して脊髄くも膜下出血は,急激な背部痛と急性下肢麻痺を呈するが,Kernig徴候やBruzinski徴候などの髄膜刺激徴候を伴うことが特徴である.脊髄実質内出血は,出血部位に応じて臨床症状がみられる.脊髄出血は一般に外傷によるものが大半を占め,脊髄動静脈奇形破裂(図15-5-28)によるものがこれにつぐ.まれに血液疾患や膠原病,抗凝固薬使用,脊髄腫瘍,静脈性脊髄梗塞,妊娠後期などが原因となる.脊髄動静脈奇形は脊髄腫瘍の4.4%を占め,そのうち31%が出血をきたす.
臨床症状・治療
 突発性の背部痛と対麻痺などの脊髄横断症状で発症することが多い.脊髄横断面で全体的に傷害されれば,横断性脊髄障害(下肢完全麻痺)となるが,脊髄半側障害の場合はBrown-Séquard症候群となる.
 検査所見としては,CTで脊髄腔内に高吸収域を認め脊髄の腫大を認める.MRIではより詳細な空間的位置関係が明らかとなり,部位診断(横断面と縦断面)が可能となる.髄液検査ではくも膜下出血や実質内出血ならば血性となり,炎症細胞や悪性細胞の検出ができれば鑑別診断上も有用である. 治療は出血部位と程度により,保存的治療あるいは外科的手術を選択する.特に硬膜下・硬膜外出血や破裂動静脈奇形,腫瘍内出血では発症後速やかに血腫や原因病巣の外科的除去を行えば比較的予後は良好であるが,時間経過とともに脊髄麻痺症状は固定化してくる.[阿部康二]
■文献
後藤文男,天野隆弘:臨床のための神経機能解剖学,pp122-123,中外医学社,東京,1992.
Shephard RH: Spinal arteriovenous malformations and subarachnoid haemorrhage. Br J Neurosurg, 6: 5-12, 1992.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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