CT(読み)しーてぃー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「CT」の意味・わかりやすい解説

CT
しーてぃー

computed tomographyの略で、通常X線を用いて生体の断層像を得るX線CTをさす。コンピュータ断層撮影法。「物体の内部構造は、その物体を複数の方向から投影して得られた情報から再構成することができる」という基本原理に基づいている。実際には生体のある断面に多方向から幅の狭いX線ビームを曝射(ばくしゃ)し、透過したX線を検出してその断面内でのX線の吸収の度合いの空間分布をコンピュータで計算し、画像化している。人体の最初のCT画像は1972年にイギリス放射線学会でハウンズフィールド(1979年ノーベル医学生理学賞受賞)により、computerized axial transverse scanningという名称で発表された。それ以来、X線によるスキャン方法と検出系さらに画像再構成技術の開発進歩により、空間分解能と濃度分解能に加え時間分解能にも優れた断層撮影法として、CTは全身の画像診断に革命的な進歩をもたらしている。

大友 邦 2021年8月20日]

CTの長所

CTの長所として以下の点があげられる。

(1)従来のX線像と比べて10倍の濃度分解能を有している。

(2)0.5~1ミリメートル程度の優れた空間分解能を有している。

(3)関心領域だけでなくその断面のすべての構造が自動的に描出されるので、全体像の把握が容易である。

(4)水溶性ヨード造影剤の急速静脈注射下に連続的に画像を得ることにより(ダイナミックCT)、血管系や腫瘍(しゅよう)などの血行動態を時間的空間的に精密に把握できる。

 臨床的には形態的な異常が出現するさまざまな疾患・病態の診断に応用されているが、とくに頭部外傷における出血巣の検出や肺、肝臓の悪性腫瘍の早期診断に大きな役割を果たしている。CTで発見可能な病巣の大きさの下限は、病変の種類および部位により異なるが、3~5ミリメートル大のものは異常として検出可能であり、1センチメートルを超える病巣では質的診断も可能となる。

[大友 邦 2021年8月20日]

CTの種類

X線の走査法や検出器の配列などから歴史的に次の5段階に分類される。第1世代=対向配置された1個のX線管と検出器が直線走査と回転動作を交互に繰り返す。第2世代=並列した小角ファン(扇状)ビームX線管と数個の検出器が直線走査と回転動作を交互に繰り返す。第3世代=対向配置されたパルスファンビームを発生するX線管と円弧状に配列された多数の検出器が対になって回転する。第4世代=検出器が円周状に固定配列され、パルスファンビームを発生するX線管のみが回転する。第5世代=半円状に配列した陽極に電子ビームを当てX線を発生させ、向かい合うように円弧状に配列された検出器でとらえる。画像を得るために第1世代で4~5分、第2世代で20秒から1分を要していたが、第3、第4世代の装置では1~2秒に短縮され(高速CT)、電子ビームを用いた第5世代では50ミリ秒で画像を得ることが可能である(超高速CT)。第3世代の改良型として本体に敷かれたレール状の構造から電気供給を受けるX線管球を連続的に回転させる方式(スリップリング方式)がある。この方式ではテーブルを連続的に移動させながら、螺旋(らせん)状に得られる情報から断層像を再構成することが可能となった(ヘリカルCT)。さらに検出器の多列化がすすめられ(マルチスライスCT)、64列の装置が普及している。また日本で開発された320列の検出器を搭載した装置では、X線管球を1回転させるだけで、心臓や脳全体の画像を得ることが可能で、最新の装置では0.15ミリメートルの空間分解能が達成されている。これらの多列化により、「より早く、より広く、より細かく」画像を得ることが可能となり、従来より時間分解能の高いダイナミックCTや画像再構成による三次元CT像が容易に得られるようになっている。一方で、二つの異なるエネルギーのX線を用いるデュアルエネルギー方式が注目され、二つの管球を搭載した装置と、一つの管球から時間差をもって異なるエネルギーのX線を曝射する装置がそれぞれ開発されている。CTと血管造影装置を一体化した装置も開発され(IVR‐CT)、とくに肝腫瘍の早期発見を目ざして肝臓への選択的な造影剤注入下にCT像(CT angiography)を得ることも可能となっている。CT像の白黒の濃淡(グレースケール)は、画像を構成している単位(画素、pixel)ごとのCT値を表示したもので、CT値の単位として発明者の名をとったHounsfield Unit(H.U.)が使用されている。

 X線を用いないCTには磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging:MRI)と核医学のSPECT(スペクト)(single photon emission CT)や陽電子放出核種を使用するPET(positron emission tomography)がある。

[大友 邦 2021年8月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「CT」の意味・わかりやすい解説

CT
シーティー
current transformer

計器用変流器。電力系統において,線路に流れる大電流を小電流に変換し,高圧回路から測定器や継電器を絶縁して使用する目的に用いられる変圧器。一次電流 (線路電流) に比例した二次電流を得るために,通常の変圧器と異なり種々の工夫がなされている。

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