くも膜下出血

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

くも膜下出血

脳を覆うくも膜の下に張り巡らされている血管が切れる病気。動脈のこぶが破裂することが多く、突然、今まで経験したことがない激しい頭痛が起きるのが大きな特徴だ。すぐに救急車を呼ぶ必要がある。手術法は、こぶを洗濯ばさみのようなもので閉じるクリッピング法と、足の付け根から管を入れ、金属のコイルで塞ぐコイル塞栓(そくせん)術がある。

(2016-11-25 朝日新聞 朝刊 岡山全県・1地方)

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百科事典マイペディアの解説

くも膜下出血【くもまくかしゅっけつ】

くも膜と脳軟膜の間,すなわちくも膜下腔内の出血。広義には,外傷性のものや,脳腫瘍による出血も含むが,一般には脳卒中の一種で,脳動脈瘤(りゅう)破裂や脳動脈奇形によるものをいう。脳出血が高年齢者に多いのに対し,むしろ青壮年者に多く見られる。症状は脳出血に似るが,特に激しい頭痛と嘔吐(おうと)を特徴とする。予後は脳出血より良好であるが,再発しやすく,再発を繰り返すと致死率は高くなる。診断は腰椎穿刺(せんし),CTスキャン,脳血管撮影などによって確定され,脳外科的手術などが行われる。
→関連項目頭痛専門人間ドック動脈瘤内出血

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生活習慣病用語辞典の解説

くも膜下出血

脳の血管の枝分かれしたところにできたこぶ (静脈瘤) が破れ、脳の表面に出血を起こす病気です。動脈瘤には高血圧でできるものや生まれつきの血管の形状によりできるものなどがあります。 主な症状は、頭痛、悪心、嘔吐、意識障害などです。

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家庭医学館の解説

くもまくかしゅっけつ【くも膜下出血 Subarachnoid Hemorrhage】

◎生命にかかわる危険が高い
[どんな病気か]
 脳は、3層の膜(まく)でおおわれています。脳の表面を直接おおっている膜を軟膜(なんまく)といい、その上をくも膜が、さらにその上を硬膜(こうまく)がおおっています(図「脳の縦断面(側面)」)。
 くも膜と軟膜の間には、くも膜下腔(まくかくう)というすき間(腔(くう))があって、ここには、脳脊髄液(のうせきずいえき)が循環しています。血管が破れ、このくも膜下腔に出血するのが、くも膜下出血です。
 くも膜下出血も脳卒中(のうそっちゅう)の一種ですが、脳卒中のなかに占めるくも膜下出血の割合は12%で、脳梗塞(のうこうそく)や脳出血(のうしゅっけつ)と比べると頻度はそう高くはありません。しかし、生命にかかわる危険が高く、心臓まひなどを含めた全突然死の4.7%を占めます。
 また、中高年のいわゆる過労死(かろうし)の原因の1つとしても、しばしば取り上げられています。
◎ほとんどは脳動脈瘤破裂(のうどうみゃくりゅうはれつ)が原因
[原因]
 頭部外傷で脳に傷がつくと、くも膜下出血がおこることがあって、これを外傷性くも膜下出血といいます。
 外傷(けが)が原因でないものを特発性くも膜下出血といい、単にくも膜下出血といった場合は、この特発性のことをさします。
 この特発性くも膜下出血は、ほとんどが脳動脈の一部がこぶのようにふくらむ脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)(「脳動脈瘤」)の破裂(はれつ)によっておこります。従来、脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)(「脳動静脈奇形」)や、もやもや病(「もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)」)という脳血管の形態異常も、くも膜下出血の原因になると考えられていたのですが、CT検査が普及して以来、これらが破裂して出血したときは、くも膜下出血よりも脳出血(のうしゅっけつ)になるケースが多いことがわかってきました。
 脳梗塞(のうこうそく)や脳出血は、高血圧、動脈硬化(どうみゃくこうか)などの生活習慣病が基盤にあっておこるために、中年以降の人に多いのですが、くも膜下出血は、ほとんどが脳血管の形態異常が原因でおこるため、年齢を問わずに発症するのが特徴で、20~30歳代で発症する人もいます。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、40~50歳代の人に多くみられます。
◎突然の激しい頭痛(ずつう)が特徴
[症状]
 バットで殴(なぐ)られたような激しい頭痛、嘔吐(おうと)、けいれん、意識障害などが突然おこるのが、くも膜下出血の症状の基本ですが、出血のしかたや出血量によって症状の現われ方がちがいます。
 重症の場合は、意識障害や呼吸障害が強く、昏睡(こんすい)から覚めないまま死亡することもあります。
 出血量が少ないと、意識障害がないか、あっても数分で意識が回復し、医師の治療を受けなくても元気になりますが、その後、いわゆる「ぼんのくぼ」といわれるくびすじの痛みや頭全体の痛み、嘔吐が続きます。出血量がごく少ない場合は、これらの症状を単なるかぜや胃炎の症状とまちがえてしまうこともあります。
 脳内出血をともなうときは、からだの片側のまひや、ことばがでなくなったり、ことばは出ても意味をなさない失語症(しつごしょう)がおこることがあります。
 動脈瘤破裂が原因の場合、血管(けっかん)れん縮(しゅく)(血管が細くなること)や正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)の症状(「脳動脈瘤」の脳動脈瘤が破裂したときの症状)も現われてきます。
◎CTが診断の決め手
[検査と診断]
 突然の激しい頭痛、嘔吐、けいれん、意識障害などの症状があれば、まずくも膜下出血を疑わなくてはなりません。
 出血してから時間がたつと、くびすじがかたくなり(項部硬直(こうぶこうちょく))、前屈(ぜんくつ)(うなずく動作)ができなくなります。
 CTで頭蓋(ずがい)内を撮影すると、出血の有無、部位、程度などが確実に診断できます。くも膜下出血の診断には、MRIよりもCTのほうがすぐれているのです。
 軽いくも膜下出血の場合には、出血後数日たつと、出血した血液が吸収されてしまってCTに写らないことがあります。このようなときは、腰椎穿刺(ようついせんし)を行なって脳脊髄液を採取します。この中に血液がまじっていれば、くも膜下出血がおこった証拠です。
◎一刻も早く、脳神経外科へ
[治療]
 くも膜下出血は、発症後1時間ぐらいの間の状態の変化が、その後の病状を左右することが多いものです。また、6時間以内に再び出血することも少なくありません。したがって救急車を呼ぶなどして、患者さんを一刻も早く脳神経外科のある病院へ運ぶことが必要です。乱暴な運び方をしてはいけないのはもちろん、手当をしながら静かに運ばなければいけないので、救急車の出動を依頼したほうがよいのです。
 病院では、呼吸、血液循環などの全身状態を改善する治療を開始し、興奮や苦痛を除いて安静をはかります。血圧や脳圧を下げる薬剤も使用します。さらに脳動脈瘤など、出血の原因を探す検査が行なわれます。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

くも膜下出血
くもまくかしゅっけつ

頭蓋(とうがい)骨の下にある脳は、外側から、厚い硬膜、その下に薄い半透明なくも膜、さらにその下にある脳実質を包む軟膜という3層の膜に覆われ、くも膜と軟膜との間は、くも膜下腔(くう)とよばれる空間があって脳脊髄(せきずい)液に満たされている。この中に出血がおこったものを、くも膜下出血という。[加川瑞夫]

原因

70~80%は脳動脈瘤(りゅう)の破裂であり、ほかに脳動静脈奇形(10%)、高血圧や脳動脈硬化に伴う血管病変などがあげられる。頭部の血管分岐部の中膜欠損あるいは内弾性板の欠損があり、これに血流などに関するなんらかのストレスが加わって嚢状(のうじょう)に膨れたものが脳動脈瘤である。動脈瘤拡大あるいは破裂は、動脈瘤柄部にある動脈瘤開口部よりのジェット血流が、動脈瘤穹窿(きゅうりょう)ドームを直撃することによるとされている。先天性嚢状動脈瘤のほかに、細菌性、梅毒性、動脈硬化性、外傷性などの動脈瘤があるが、臨床上は先天性嚢状動脈瘤がもっとも多い。
 脳動脈瘤は、形状により嚢状動脈瘤、紡錘(ぼうすい)状動脈瘤、解離性動脈瘤に分ける。くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤は、90%が嚢状動脈瘤である。頭蓋内解離性動脈瘤は比較的若年に発生し、原因は動脈硬化性ではなく、はっきりしない場合が多い。
 脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、年間人口10万人当り15人前後の発生があるとされている。破裂の誘因は不明のことが多いが、統計によれば、睡眠中が30%ともっとも多い。精神的な緊張、あるいは激しい運動などが契機となることはむしろ少ない。妊娠中の脳動脈瘤の破裂が知られている。妊娠1万件に1例の頻度であり、妊娠中期から後期に多く、妊娠が脳動脈瘤の破裂に無関係ではないとされている。[加川瑞夫]

症状

特徴的症状は、突然おこる頭が割れるような激しい頭痛であり、多くは吐き気、嘔吐(おうと)、羞明(しゅうめい)(まぶしさ)を伴う。また、瞳孔(どうこう)異常などの脳神経症状あるいは失語症や片麻痺(へんまひ)などの脳局所症状を呈することも少なくない。通常、これらの症状は一過性で、1~2週間で軽快する場合が多い。しかし、出血発作が激しい場合は、けいれん発作をおこしたり、頭痛と同時に意識を失う場合もあり、意識が回復しないまま死亡することもある。
(1)頭痛 くも膜下出血でもっとも顕著なのは髄膜刺激症状に伴う強烈な頭痛である。「これまでに経験したことのないような激しい頭痛」あるいは「雷にうたれたような頭痛」であったと表現される。項部強直は、出血後24~48時間で明らかとなる。
(2)吐き気、嘔吐 髄膜刺激症状、脳圧亢進(こうしん)による。
(3)意識障害 出血の際に、一時的でも意識障害をきたすものが約半数にあるとされる。したがって、強烈な頭痛に意識障害を伴えば、くも膜下出血に間違いないと考えられる。
(4)眼症状 まぶしさをしばしば訴える。眼底出血、硝子体(しょうしたい)出血を伴うテルソンTerson症候群がある。
(5)全身けいれん 全身けいれんを約10%に伴う。
(6)片麻痺、失語症などの局所症状 くも膜下出血急性期ではむしろ少ないほうであるが、脳血管攣縮(れんしゅく)、脳内血腫(けっしゅ)に起因するものである。そのほかの合併症として心電図異常、SIADH(ADH不適合分泌症候群、syndrome of inappropriate antidiuretic hormone)、中枢性肺水腫、消化管出血、精神症状などがある。[加川瑞夫]

診断

従来は腰椎穿刺(ようついせんし)によって血性髄液を証明する方法が行われたが、最近はただちにCT(コンピュータ断層撮影法)が行われ、くも膜下出血が証明されたら速やかに脳血管撮影が行われる。また、3D‐CT(三次元CT)、MRA(磁気共鳴血管造影法)などによって非侵襲的に動脈瘤を描出する方法が行われる。
(1)腰椎穿刺 腰椎穿刺により髄液が血性であることを確かめる。きわめて新しい出血では髄液遠沈後の上澄みは透明である。出血4~6時間後の上澄み液はキサントクロミー(黄色調)になる。髄液の血性ないしキサントクロミーは2~4週後には消失する。
(2)CT 出血後5~7日以内にCTをとれば、90%に出血を確認することができる。血管外に漏出した血液は、高吸収域として白っぽく描出される。くも膜下出血においてCTにより得られる情報には出血の程度、出血部位、血腫形成、水頭症の有無、脳浮腫の有無・脳ヘルニアの有無、脳梗塞の有無、脳動脈瘤そのものの描出などがある。最近では、3D‐CTにより2.7ミリメートル以上というかなり小さい動脈瘤が検出されている。
(3)MRI 臨床的に急性期ではCTのほうが有効であるが、CT上出血が数日たっても明らかでない場合、あるいは凝血塊の存在を知るためには有用である。さらに動脈瘤そのものを描出できる場合がある。
(4)MRA 脳の血管を描出して、動脈瘤を検索する方法で、脳血管撮影に比べ無侵襲であるため脳ドックなどでも盛んに行われる。
(5)脳血管撮影 最終診断はこれによる。動脈瘤の局在、大きさ、血管攣縮の有無については正確な情報を得ることができるが、脳室の大きさ、血腫、脳浮腫の部位、程度などについての情報は、CT、MRIのほうがまさる。[加川瑞夫]

治療

原因疾患の治療が主になるが、くも膜下出血の原因の半数以上を占める脳動脈瘤は、一度出血すると再出血しやすく、そのたびごとに重症となり、放置すれば半数以上は死亡する。したがって、くも膜下出血が疑われたら早急に脳外科専門の医療施設へ搬送し、適切な治療を行うべきである。手術的治療は、動脈瘤への血流をなくすことで再出血を防ぎ、出血に伴う禍根を断とうとするものである。また、脳血管攣縮は、くも膜下腔にある血腫が原因であることが確かめられているから、急性期手術では、手術の際に脳底部の血塊を可及的に除去して、脳血管攣縮の発生をも防ごうとするものである。手術の方法としては、柄部閉塞(ネッククリッピング)がもっとも基本的、根治的なもので、動脈瘤の柄部を金属製のクリップで閉塞するものである。そのほかネッククリッピングが不可能な場合に、動脈瘤の壁を補強して破裂を防ごうとするコーティングなども行われる。近年、血管内手術が行われ、カテーテル法により動脈瘤内にコイルを挿入し、動脈瘤を血栓化する方法が行われている。
 術前の患者の状態は手術成績と密接に関連する。術前の患者の状態を表す方法として、ボラトレルBotterellの分類あるいはハントHuntの分類があるが、わが国では一般に後者の重症度分類を用いる。重症度Gradeの高い、意識状態の悪い症例では手術はあまり意味をなさない。手術の適応は、重症度Grade3以下であり、一般に重症度Grade4、5は手術を行わず、状態がよくなれば手術を施行する。ただし、脳内血腫が症状を悪くしているのであれば重症度Grade4でも血腫除去と根治手術を行う場合がある。患者の重症度がGrade1~3とよければ、できるだけ早期に手術をして、再出血を防ぎ、脳底部髄液槽の血塊をできるだけ除去して、脳血管攣縮の発生を防ごうというのが一般的な考え方になってきている。[加川瑞夫]

予後

くも膜下出血をきたした症例の約40%は病院に到着する前に死亡するか、到達しても状態が悪くて手術することができない。手術が行われた破裂脳動脈瘤の予後は、60%前後は予後良好で社会復帰可能となっているが、40%前後は死亡10%前後を含む予後不良例となっている。破裂脳動脈瘤の予後不良となる三大原因は25.5%が出血の直接作用、33.5%が脳血管攣縮、17.3%が再出血である。[加川瑞夫]

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内科学 第10版の解説

くも膜下出血(血管障害)

定義・概念
 くも膜下出血(SAH)は脳動脈瘤や脳血管奇形の破裂によりくも膜下腔の脳槽に出血し,激烈な頭痛と髄膜刺激症状を生じる脳卒中の一病型である.
分類
 脳動脈瘤は囊状,紡錘状,細菌性,解離性,外傷性動脈瘤に分類され,脳血管奇形は毛細管拡張,静脈瘤,海綿状血管腫,脳動静脈奇形(AVM),静脈性血管腫に分類される.
原因・病因
 SAHは中・高年では脳動脈瘤,若年ではAVMの破綻が原因となることが多い.SAHを生じやすいのは囊状動脈瘤であり,紡錘状動脈瘤は破裂しにくい.細菌性脳動脈瘤は感染性心内膜炎により生じる.頭蓋外の解離性動脈瘤(動脈解離)は破裂しにくく,虚血性脳卒中を生じやすいが,頭蓋内の動脈解離はSAHの原因となりうる.常染色体優性遺伝性多発囊胞腎(ADPKD)では第16染色体短腕上のPKD1または第4染色体長腕上のPKD2の遺伝子異常により生じ,多発性,進行性の脳動脈瘤を生じやすい.
疫学
 SAHは脳卒中の10%弱を占め,年間10万人あたり10~20人が罹患し,年間約13000人が発症している.発症年齢は脳梗塞や脳出血より若年で40~60歳に多く,性差は脳梗塞や脳出血とは対照的に男性より女性に多く,白人より黄色人種や黒人に多い.SAHの危険因子として家族歴,高血圧,喫煙,飲酒が知られている.非外傷性SAHの70~80%は動脈瘤破裂であり,10~20%は原因不明である.日本での未破裂脳動脈瘤の年間発症率は1%前後と報告されているが,米国の報告では10 mm未満の年間破裂率は0.05%と低い.
病理
 囊状動脈瘤はWillis動脈輪の前半部,特に前交通動脈,内頸動脈・後交通動脈分岐部,中大脳動脈分岐部に好発し,後半部では脳底動脈先端部に多い(図15-5-19).囊状動脈瘤では病理学的に中膜や内弾性板に欠損がみられる.
病態生理
 囊状動脈瘤は先天的な動脈壁の素因に血行力学などの後天的な要因が加わって生じると推測されている.紡錘状動脈瘤は動脈硬化が原因となる.解離性動脈瘤は軽微な外傷や線維筋性形成異常症などの血管結合織の異常が原因となる.脳血管奇形は胎生期の異常により生じる.SAHの危険因子として家族歴があげられており,脳動脈瘤の遺伝的素因について遺伝子多型の検討が行われているが,特異的な遺伝子変異は同定されていない.
臨床症状
 いままでに経験したことのない激烈な頭痛で発症するのが特徴であり,項部硬直やKernig徴候などの髄膜刺激症状がみられる.頭蓋内圧亢進や水頭症の程度に応じて意識障害が進行する.局所脳症状は通常みられないが,動脈瘤や血腫が局所的に進展するか,数日後から血管攣縮により脳梗塞を併発すると巣症状を生じうる.たとえば,内頸動脈・後交通動脈分岐部動脈瘤では動眼神経麻痺,前交通動脈瘤では精神症状,中大脳動脈瘤では片麻痺がみられる.また,警告徴候として,本格的な出血の前に小出血を生じ,数時間で軽快してしまう頭痛が起こることがある.網膜前出血や硝子体下出血(Terson症候群),心電図異常(頻脈,ST上昇,QT延長など),肺水腫を合併する場合がある.
検査成績
 頭部CTでくも膜下腔に高吸収域を認める(図15-5-20).続発する水頭症による脳室拡大を伴うことが多い.血管攣縮による浮腫や脳梗塞により脳実質内に低吸収域を認めることがある.SAHでは原因となった動脈瘤やAVMの検索に脳血管撮影が必須である(図15-5-21).髄液検査では血性またはキサントクロミーを認める.
診断
 激烈な頭痛で発症し,項部硬直を認め,頭部CTでくも膜下腔に高吸収域を認めれば診断は確実である.CTで高吸収域を認めれば腰椎穿刺は必要ないが,小出血ではCTで高吸収域を認めにくいので,CTで異常なく,頭痛の原因としてSAHが否定できない場合には腰椎穿刺が必要となる.
鑑別診断
 頭痛を呈する疾患の鑑別が必要である.片頭痛や緊張型頭痛は慢性反復性の頭痛であり,局所神経徴候がなく,頭部CT・MRIで異常を認めないことから鑑別される.髄膜刺激症状を伴う頭痛として髄膜炎との鑑別が問題となるが,頭部CT・MRI所見で出血を認めず,髄液で細胞増加を認めることから鑑別される.
合併症
 SAHにより髄液の流通障害が生じ,水頭症を合併しやすい.血管攣縮により脳梗塞を併発する場合がある.急性期には感染症や消化管出血を合併しやすい.
予後
 初発のSAHの30~40%は死亡または介助を要する後遺症を残す.高度の意識障害を伴う場合は予後不良である.脳梗塞合併例では局所神経症状が後遺症として残存する場合がある.水頭症合併例では認知症,尿失禁,歩行障害を生じる.
治療・予防・リハビリテーション
 SAHの重症度をHunt & Hessの分類により判定する.グレード1(無症状か軽度の頭痛と項部硬直),グレード2(中等度の頭痛と項部硬直に脳神経麻痺を伴う),グレード3(軽度の意識障害と巣症状)は手術適応があり,グレード4(中等度の意識障害と麻痺の合併)でも手術する場合があるが,グレード5(昏睡状態)は手術適応がない.SAHを発症したら,まず血圧管理,鎮痛対策,抗浮腫対策が必要である.降圧薬の静脈投与により収縮期血圧を150 mmHg以下に保ち,鎮静薬や鎮痛薬により頭痛を軽減し,浸透圧利尿薬により頭蓋内圧を低下させる.
 脳血管撮影で囊状動脈瘤が確認されたら,動脈瘤の頸部にクリップを懸ける手術(クリッピング)を行う.近年は未破裂動脈瘤をはじめとして塞栓用コイルによる血管内塞栓術を行う症例も増加している.AVMには血管内塞栓術やガンマナイフなどの定位的放射線手術療法を行う.SAHに対しては脳室ドレナージを行い,後遺症による正常圧水頭症には脳室・腹腔シャントを行う.脳梗塞の併発により片麻痺などの後遺症を生じた患者には脳梗塞や脳出血と同様にリハビリテーションを行う.飲酒や喫煙はSAHの危険因子になるので,禁酒や禁煙を指導する.家族歴にSAHを有する場合にはMRAによる未破裂動脈瘤の検索が推奨される.[内山真一郎]
■文献
Adams Jr HP, Davis PH, et al: Aneurysmal subarachnoid hemorrhage. In: Stroke: Pathophysiology, Diagnosis, and Management (Mohr JP, et al), pp377-396, Churchill Livingstone, New York, 2004.
内山真一郎:脳血管障害.内科学(2分冊版Ⅱ) (黒川 清,松澤佑二編),第2版,pp1707-1715,文光堂,東京,2003.内山真一郎:くも膜下出血.ダイナミックメディシン(下条文武,斉藤 康監修),第5巻,pp18-53-18-61,西村書店,新潟,2003.

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