共同通信ニュース用語解説 「脊髄腫瘍」の解説
脊髄腫瘍
背骨の中を通る神経や周辺にできる腫瘍。頻度は10万人に1~2人。良性であることが多いが、腫瘍で神経が傷んだり圧迫されたりすると体に痛みやしびれ、まひが出る。手術で摘出するほか放射線や抗がん剤を追加する場合もある。
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背骨の中を通る神経や周辺にできる腫瘍。頻度は10万人に1~2人。良性であることが多いが、腫瘍で神経が傷んだり圧迫されたりすると体に痛みやしびれ、まひが出る。手術で摘出するほか放射線や抗がん剤を追加する場合もある。
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脊髄と脳を合わせて中枢神経と呼び、脊髄とは
腫瘍の存在部位と脊髄および硬膜との位置関係から、脊髄内部に腫瘍が発生する
組織の異常な増殖によるものですが、その原因が何かについては不明で、今後の研究に期待されるところが大きいのが現状です。脊髄から出ている脊髄神経の一部である脊髄神経根に発生する
腫瘍の発育速度や発生部位により異なります。腫瘍の発育は通常ゆっくりであるため、腫瘍が発見された時にはかなり大きくなっている場合が多いですが、画像診断技術の進歩から無症状の時に偶然見つかる場合もあります。
症状は腫瘍の存在部位で決定され、限局する痛みや神経支配領域にそった放散痛が起こります。このため、頸椎に発生した場合は上肢症状、腰椎に発生した場合には下肢症状を伴うことがあります。
疼痛は、どの部位に発生しても初発症状として出現することが多く、腫瘍が増大すると運動麻痺や排尿障害を伴います。麻痺症状が急激に進むことはありませんが、階段からの転落や交通外傷など大きな外力が加わると、それまで気づかなかった症状が突然現れることがあります。
単純X線検査では
MRIは通常、薬剤の注射が不要で痛みのない検査方法ですが、腫瘍と区別するためにガドリニウムという薬剤を少量静脈内に投与することがあります。手術計画を立てるために脊髄腔造影検査やCT検査を行う場合もあります。
脊髄腫瘍の治療は、神経組織の機能を損なわずに腫瘍を摘出し再発を予防することです。髄膜腫や神経鞘腫はその大部分が良性な腫瘍であるため、薬による内科的治療は効果がなく、手術が成功すれば治療成績は良好です。
髄内腫瘍の一部には悪性のものがあり、正常な脊髄構造との境界が不鮮明な腫瘍は、全摘出が困難なこともあります。この場合は、放射線治療や化学療法を追加して治療を行います。
疑わしい症状に気づいた場合は、整形外科あるいは脳神経外科を受診するのがよいでしょう。MRI検査で確定診断がつけば、手術のために専門医がいる大きな病院を紹介してもらうことが必要です。
豊田 宏光, 中村 博亮
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
脊椎(せきつい)管内の脊髄とその隣接組織、硬膜、くも膜、脊椎(せきつい)骨などから発生する腫瘍で、また、他の部位からの転移性腫瘍も含まれる。患部の疼痛(とうつう)をはじめ、それ以下の脊髄が支配する運動知覚障害、膀胱(ぼうこう)・直腸障害を特徴とする。好発部位は胸髄であるが、発生部位によって脊髄硬膜外腫瘍と脊髄硬膜内腫瘍に分けられ、後者は硬膜内髄外腫瘍と硬膜内髄内腫瘍に分ける。高解像力CT(コンピュータ断層撮影法)の普及、MRI(磁気共鳴映像法)の登場で、脊髄腫瘍の診断は飛躍的な発展を遂げ、手術顕微鏡下でのマイクロザージェリー(microsurgical technique)の導入、術中モニタリング使用により、脊髄腫瘍の摘出が安全に行われるようになり、治療成績は著しく向上した。
発生頻度は、年間10万人に対し1~3人といわれ、脳腫瘍の約4分の1から5分の1である。好発年齢は30~60歳代で、性差はあまりないが、髄膜腫では女性に多い。脊髄硬膜外腫瘍は、全体の50%を占め、転移性腫瘍がもっとも多い。脊椎骨に転移し、椎体、椎弓、椎弓根の破壊や腫瘍の増殖をきたして、硬膜外に進展し、脊髄、神経根を圧迫する。
原発巣は肺癌(がん)、乳癌からのものが多く、消化器の癌、子宮癌、前立腺癌などもある。初発症状は、腫瘍または破壊された骨組織による神経根の圧迫により、支配領域の根性痛で始まる。やがて脊髄も圧迫されて、急速に脊髄症状を呈し、経過はきわめて速い。
硬膜内腫瘍は50%を占める。そのうち硬膜内髄外腫瘍は70%と多くみられ、大半は、良性腫瘍である神経鞘(しょう)腫や髄膜腫であり、その頻度はほぼ同程度である。神経鞘腫では、腫瘍の境界は鮮明で、薄い披膜(ひまく)を有しており、手術により摘出も容易である。比較的予後がよい。硬膜内髄内腫瘍の場合は、頻度は30%と少ないが神経膠(こう)腫が大部分を占める。上衣腫がもっとも多く、ついで星細胞腫が多い。
診断は神経学的検査、髄液検査、放射線学的検査によって行われる。腰椎穿刺(せんし)によって髄液の通過障害がわかり、油性造影剤にかわって開発された非イオン性水溶性ヨード造影剤で脊髄造影を行うと、腫瘍陰影を証明できる。MRIの出現以前には、脊髄腫瘍のもっとも有力な補助診断法であったが、しだいに行われなくなっている。CTや選択的脊髄血管撮影、なども診断に有用である。CTでは、脊椎骨の変化とともに、腫瘍自体を直接描出することが可能である。とくに脊椎間の内外に進展した腫瘍の診断には優れている。単純CTでは、X線吸収値の低い脂肪腫やX線吸収値の高い髄膜腫などが描出される。造影剤増強を行うと腫瘍自体が描出され、腫瘍と脊髄との位置関係が明瞭(めいりょう)になる。
MRIの登場で、脊髄腫瘍の診断は飛躍的な進歩を遂げて、容易となった。とくに髄内腫瘍の診断には有用である。T1強調画像で、脂肪腫は高信号域として描出されるが、他の腫瘍では、脊髄腫大像や脊髄圧排像が示されるのみである。髄内腫瘍に合併した嚢胞は低信号域として描出される。T2強調画像では、腫瘍陰影は高信号域として描出される事が多い。造影剤Gd-DTPAにより高信号域として明瞭に描出される。
治療としては、脊髄腫瘍は進行性に脊髄や神経根を圧迫し、機能障害をもたらすため、脊髄腫瘍の診断がなされたら、できるだけ早期に摘出し、脊髄、神経根に対する減圧をはかり、神経機能の回復を促すのが最良の方法である。髄膜腫、神経鞘腫などの硬膜内髄外腫瘍、血管芽腫、上衣腫など非侵襲性の髄内腫瘍の全摘出は可能である。
星細胞腫など浸潤性の髄内腫瘍や硬膜外腫瘍では全摘出不能の場合が多く、神経組織に対する減圧効果しか期待できないこともある。転移性腫瘍、浸潤性髄内腫瘍などに放射線療法や化学療法も行われる。
[加川瑞夫]
脊髄をおさめる脊椎管内に発生する腫瘍で,脳腫瘍の場合と同様,脊髄内に発生する髄内腫瘍と,脊髄外に生ずる髄外腫瘍とが区別される。脊髄内に生ずるものは原発性のものがほとんどであり,大多数は星状膠腫(こうしゆ)や上衣細胞腫などのような神経膠腫である。これらの腫瘍は病理組織学的には良性のものであっても,手術不能のものがほとんどであるため予後はきわめて悪い。脊髄の外に生じてこれを圧迫する髄外腫瘍は硬膜内腫瘍と硬膜外腫瘍に区別される。硬膜内髄外腫瘍は,そのほとんどが神経鞘腫や髄膜腫などの良性腫瘍であり,手術的に完全に摘出することができる。これに対し,硬膜外腫瘍の多くは悪性腫瘍の転移によるもので,予後は絶対的に不良であるが,転移巣とそれによる圧迫を手術によって除去することは可能なことが多い。脊髄腫瘍の臨床症状として重要なものは対麻痺または四肢麻痺と膀胱直腸障害および感覚鈍麻である。このほかに腫瘍の存在するレベルでの脊髄症状または脊髄根症状が出現するが,髄内腫瘍では筋萎縮の形をとりやすく,髄外腫瘍では疼痛やしびれのことが多い。転移性硬膜外腫瘍では根痛の頻度が高く,また進行が週の単位で,かなり速いのが特徴の一つである。
執筆者:岩田 誠
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