翻訳|hematoma
もともと内腔のない組織や臓器内に出血し,血液が1ヵ所にたまって腫瘤状となった状態をいう。内腔のあったところや管状ないし囊状の臓器内に出血し,血液がたまった状態は血瘤hematoceleと呼ばれ,血腫とは区別されている。また血腫は腫瘤状で血液の塊を形成するが,広い範囲にわたって境界が不明りょうに血液が浸み出した状態は血性浸潤と呼ばれている。血腫の形成により,周囲組織を圧迫し出血のもととなった血管を圧迫して,出血を止める効果がみられることもある。血腫が皮下組織でみられた場合には,せいぜい周囲を圧迫するだけで,異常に大きな障害をおこすことは少ないが,一定の決められた容積しかない部分,たとえば頭蓋内で血腫が形成されると頭蓋内の圧力が著しく高くなり,生命活動に重要な脳組織を圧迫するため,手術などで除去しないと機能障害や死亡の原因となる。外傷による頭蓋内の硬膜内ないし硬膜下血腫はその例である。そのほか,大動脈瘤の破裂によって縦隔や後腹膜内に出血し大きな血腫を形成することもある。
執筆者:毛利 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
臓器や組織内における出血は、大きさによって、点状出血、斑(はん)状出血、血腫に分かれ、血腫とは、出血した血液がひとかたまりとなってたまった状態をいう。病理学的には、心嚢(しんのう)血腫、卵管血腫、硬膜下血腫などが重要である。心嚢血腫は、心臓の壁が心筋梗塞(こうそく)などで弱くなり、破綻(はたん)した結果、心嚢内に多量の出血をきたしたものであり、これによって心機能が抑圧された状態を心タンポナーデとよび、急性死の原因となる。卵管血腫は、卵管妊娠などによって卵管に血液が貯留した状態をいい、ときに破裂して大量の腹腔(ふくくう)出血の原因となる。また、頭部や脳に外傷を受けた場合には、硬膜下に出血して、硬膜下血腫を形成することもまれではない。硬膜下血腫では、外傷後、数週間を経て、初めて症状を呈することもあるので、注意を要する。分娩(ぶんべん)の傷害として新生児におこる硬膜下出血、硬膜下血腫は、重要な死因の一つとされている。
[渡辺 裕]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また,体外への出血の外出血と,組織内または体腔内にみられる内出血とがあり,うち皮下組織内の出血を皮下出血という。出血の大きさにより,点状出血,斑状出血,組織内に広い範囲にわたってみられる血性浸潤などがあり,また1ヵ所に血液がたまって腫瘍状を呈する血腫,体腔または管状・囊状の臓器内に出血してたまった血瘤がある。出血を起こした部位ないし臓器により,鼻出血,消化管からの吐血,大便に混じってみられる下血(吐血,下血を総称して消化管出血という。…
※「血腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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