化学辞典 第2版 「臨界レイノルズ数」の解説
臨界レイノルズ数
リンカイレイノルズスウ
critical Reynolds number
レイノルズ数が小さいときには慣性力に対して粘性力が支配的となり,流れのはじめの部分にたとえ乱れがあっても粘性によって漸次減衰,消滅し,流れは整然とした層状流れ(層流)となる.このようにどれほど乱れを与えても,あるレイノルズ数以下では乱れが減衰して,決して乱れが大きくならない限界が存在する.このときのレイノルズ数を臨界レイノルズ数という.円管内の流れでは,この値は通常,2300程度であるが,管入口が滑らかで十分な丸みをもち,流入流体にも乱れがない場合には,たとえば数万というように,大きなレイノルズ数まで層流状態を保てる.しかし,これはきわめて不安定で,わずかな振動によっても乱流に変わる.物体表面上に形成される境界層においても,レイノルズ数がある値以上になると層流境界層から乱流境界層へ遷移する.鋭い前縁を有する平板で普通の乱れの場合には,臨界レイノルズ数は3.5×105~10×106 程度である.なお,球,そのほかの物体が流れのなかに置かれているときに示す抵抗は,直径基準のレイノルズ数が(2~5)×105 付近で急激に減少する.この場合のようなレイノルズ数も臨界レイノルズ数といわれる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報