レイノルズ数(読み)れいのるずすう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「レイノルズ数」の意味・わかりやすい解説

レイノルズ数
れいのるずすう

液体または気体の一様な流れの中に物体を固定したときの流れを考える。このとき、流速U、物体の大きさL流体粘性率η、流体の密度ρを変えても、無次元量の数R=ρUL/ηが等しければ、生ずる流れのようすは同じになる。これをレイノルズ相似則といい、Rレイノルズ数という。レイノルズ数は流体の方程式で慣性項と粘性項の比になっており、形が幾何学的に相似になっていてレイノルズ数が同じなら、無次元化した方程式が同じになることがわかる。

 レイノルズ数と流れの関係を、一様な流れの中に円柱を固定した場合で考えてみる。(1)Rが1以下のとき、流れは一様で物体の前後で対称である。(2)Rが1を超えると、円柱の後ろに渦が発生し始め、Rが大きくなるにつれ、渦は大きくなる。(3)Rが40を超えると、渦は円柱からはがれ後ろへ流されていく。これをカルマン渦という。渦は上下交互に規則的に発生し、後ろの流れ(伴流)は周期的に変化する。(4)Rが500を超えると、渦の発生は規則的でなくなり、Rが1000を超えると、いろいろなサイズの渦が不規則に発生し、流れは乱れた状態(乱流状態)になる。注意すべきは、物体からかなり離れたところでは、Rの大きさにかかわらず流れは定常的で滑らかなことである。これを層流という。

 レイノルズの相似則は、たとえば次のように利用される。飛行機にかかる空気抵抗揚力を求めるのに初めから大きな機体をつくる必要はない。小さな模型をつくり、それにレイノルズ数が同じになるよう流速Uの大きい空気を吹き付けてやれば、流れのようすは実際の飛行機で生ずるものと同じになるからである。空気のような粘性の小さい気体の中の小さいサイズのものの運動と、油のような粘性の大きい液体中の大きいサイズのものの運動のようすが同じであることも、レイノルズ数が同じであることから理解できる。

池内 了]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レイノルズ数」の意味・わかりやすい解説

レイノルズ数
レイノルズすう
Reynolds number

流れの中にある物体の代表的な長さを L ,代表的な流速を U ,流体の密度をρ,粘性率をμ,動粘性率を ν=μ/ρ とするとき,無次元数 RLUρ/μ=LU/ν をレイノルズ数という。レイノルズ数は,粘性流体の流れにおける粘性力と慣性力の比を表わす。したがって,レイノルズ数が小さい流れにおいては,粘性による減衰効果が大きいため,流れは安定であり,逆に,レイノルズ数が大きい流れは一般に不安定で,乱流になる場合が多い。

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