自己修復ガラス(読み)じこしゅうふくがらす

知恵蔵 「自己修復ガラス」の解説

自己修復ガラス

東京大学大学院の相田卓三(あいだたくぞう)教授(化学生命工学)と柳沢佑(やなぎさわゆう)学術支援専門職員らの研究グループが開発した、割れても破断面を押しつけるとくっつくガラス。加熱して溶かさなくても、室温自己修復して再利用できるため、これまでよりも寿命が長いガラス製品の開発につながると期待されている。2017年12月、米科学誌「サイエンス」の電子版に掲載された。
研究グループによると、自己修復ガラスは、「ポリエーテルチオ尿素」という高分子化合物でできている。一般的に、ガラスなどの固い材料を構成する高分子化合物は、一度割れると、加熱や溶融をしない限り修復が難しい。しかし、ポリエーテルチオ尿素は、表面は固くてさらさらしているが、破断面を互いに押しつけていると融合する性質があるという。研究グループは、生体分子に使う接着剤を研究する過程で、ポリエーテルチオ尿素を生成し、その性質に気付いた。試作した材料の修復機能を確認したところ、室温における数時間の圧着で、元の強度にまで回復した。
研究グループは、この10年で、ゴムゲルのような柔らかい材料では、自己修復するものが報告されているが、室温で修復できる固い高分子材料の開発は世界初としている。

(南 文枝 ライター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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