ゲル(読み)げる(英語表記)gher モンゴル語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲル」の意味・わかりやすい解説

ゲル(コロイド)
げる
gel

コロイドのなかで、液体分散媒とする分散系が流動性を失って固化したものをいう。分散質の溶解度が低下したために、互いに連続・連結して網目上の構造をつくり、その中に分散媒が保持されたものを考えてよい。身近なもののなかにも例は多く、ところてんこんにゃくゼラチンなど食品には多数の好例がある。ケイ酸ナトリウム(水ガラス)の水溶液に酸を加えるとケイ酸ゲルができるが、これを乾燥したのがいわゆるシリカゲルである。このシリカゲルのように、ゲルの網状組織から分散媒が除かれて生じた多孔性の組織のことをキセロゲルという。酸性白土や珪藻土(けいそうど)、あるいは高野豆腐(こうやどうふ)などがキセロゲルの実例である。吸着性に富み、その用途はきわめて広い。ゲルは食品などのほか、ソフトコンタクトレンズや固形ガソリン、あるいはクロマトグラフィー用の保持担体など、いろいろと欠くことのできない重要な用途をもっているが、さらに応用の可能性も少なくない。

山崎 昶]


ゲル(天幕住居)
げる
gher モンゴル語

モンゴルの天幕住居。パオ(包)はその中国名である。形は一般に椀(わん)を伏せた形で、壁が円筒形で屋根は円錐(えんすい)形である。骨組は木製(泥柳か松)で、壁には細材を矢来(やらい)組みにしたものを4枚または8枚使用し、屋根には直径約80センチメートルの円形の天井枠に細材を傘状に取り付けたものを壁の上に固定する。骨組の上にはフェルトの覆いがかけられ(夏は1枚、冬には2~3枚重ねる)、獣毛の綱を巻く。ゲルは軽量で持ち運びが容易であるが、とくに矢来組みにされた壁の骨組は伸縮自在で、移動のときには小さく畳めるようにくふうされている。ゲルの内部では、天井枠の真下に五徳またはストーブを置き、家の中心とする。出入口は南南東の向きにつくられ、奥に向かって正面が主人または上位の客の席、左側が客席、右側が家族の席となる。かつては正面やや左に仏壇が置かれ、その左側に長持、乳桶(おけ)など、右側に食糧箱、水桶、その他の家事用品、そして出入口付近に燃料箱が置かれた。しかし、今日では仏壇はなくなり、鉄枠の簡単ベッドや短波ラジオが必需品となっている。

[佐々木史郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲル」の意味・わかりやすい解説

ゲル
gel

コロイド溶液 (ゾル) が流動性を失ってゼリー状となったもの。固まった寒天,豆腐,こんにゃく,シリカゲルなどはその例。高分子物質またはコロイド粒子がその相互作用により全体として網目構造をつくり,溶媒あるいは分散媒である液相を多量に含んだまま流動性を失った状態のことである。

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