自律神経温存術(読み)じりつしんけいおんぞんじゅつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「自律神経温存術」の意味・わかりやすい解説

自律神経温存術
じりつしんけいおんぞんじゅつ

手術療法において、自律神経を温存する術式の総称直腸がん前立腺(せん)がん、子宮頸(けい)がんなど骨盤内臓器の術後に生じる排尿障害や、おもに男性の性機能障害を軽減するためにとられる。排尿や性機能を支配する骨盤内自律神経は、直腸背面を通って直腸や泌尿生殖器に分布している。従来の骨盤内臓器の手術では、リンパ節郭清(かくせい)(リンパ節切除)の際に自律神経をともに切除したり、損傷することによって、術後に排尿障害や性機能障害がみられることが多かった。これに対し、自律神経温存術は、がんの性質や進行度に応じて、骨盤内の自律神経をできる限り温存するもので、全温存、片側温存、部分温存などの術式がある。近年のロボット手術の進歩などにより、狭い手術野においても繊細な手術操作が可能になってきており、より確実な神経温存が実現されつつある。

[渡邊清高 2019年8月20日]

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