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前立腺がん ぜんりつせんがん

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知恵蔵2015の解説

前立腺がん

前立腺(ぜんりつせん)がんとは、男性だけにある前立腺に発生するがんのこと。主に高齢の男性に見られる
前立腺は、膀胱(ぼうこう)の下に尿道を包み込むように位置するクルミの実ほどの大きさの臓器で、精液の一部を作っている。
2002年に天皇陛下前立腺がんの全摘手術を受けたことや、最近では10年1月、世界一周「アースマラソン」を敢行中の間寛平が前立腺がんにかかっていることを公表したことなどから注目が集まっている。
早期の前立腺がんには、症状はほとんどなく、あったとしても、尿が出にくい(排尿困難)、尿の回数が多い(頻尿)、排尿後も尿が残った感じがある(残尿感)などの前立腺肥大症に伴う症状が多い。
前立腺がんの患者は近年増加しており、20年には肺がんに次いで男性のがん罹患(りかん)率では第2位になると予測されている。
患者増加の背景として、PSA(前立腺特異抗原呼ばれる診断方法)の普及があげられる。
PSAは非常に敏感な腫瘍(しゅよう)マーカーで、前立腺がんの早期発見には必須の項目となっている。血液検査で簡単に調べることができ、基本的に前立腺の異常のみを検知する。
ただし、PSA値が異常であっても必ずしも前立腺がんであるとは限らない。診断のためには、肛門(こうもん)から指を挿入して前立腺の状態を確認する「直腸診」や肛門から超音波器具を挿入して行う「経直腸的前立腺超音波検査」、針で採取した前立腺の組織を調べる「前立腺生検」などを行う必要がある。
このような検査結果や、患者の年齢、今後の見通しなどを含めて治療法を検討する。前立腺がんの治療には、「手術療法」「放射線治療」「ホルモン療法」の他、特別な治療を実施せず経過観察を行う「待機療法」がある。

(星野美穂  フリーライター / 2010年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

前立腺がん

精液の一部をつくる前立腺にできる。厚生労働省によると、09年の前立腺がんによる国内の死亡者は約1万人で、男性のがん死亡原因の6位。食生活や生活習慣の変化などで、患者数は20年で7倍になっている。65歳以上で発症する場合が多い。治療には手術、放射線治療、ホルモン療法などがある。

(2011-01-21 朝日新聞 夕刊 1社会)

出典|朝日新聞掲載「キーワード」
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家庭医学館の解説

ぜんりつせんがん【前立腺がん Prostatic Cancer】

◎高齢者のがんで、急増している
[どんな病気か]
 前立腺がんは、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)(「前立腺肥大症」)と異なり、前立腺の、尿道からはなれた部分から発生するがんです。このために前立腺がんは、ある程度進行しないと排尿障害はおこりません。いいかえれば、排尿障害をともなうようになったときは、前立腺がんは少し進行していることになります。
 前立腺がんは、40歳代から発生するといわれていますが、臨床的には50歳代からみられ、年齢が進むにつれてその頻度が高くなる、典型的な高齢者のがんで、8割以上が65歳以上です。これは、老齢になるにつれて女性ホルモンの分泌(ぶんぴつ)が少なくなり、性ホルモンの不均衡がおこるためといわれていますが、詳しいことはまだわかっていません。
 欧米では、男性に発生するがんのうちでいちばん多いのが前立腺がんですが、日本では、まだそれほどではありません。しかし、日本の前立腺がんは急激に増加し、将来も増加の一途をたどると推測されています(「増え続ける前立腺がん」)。
 このがんは、初期にはあまり症状がなくても、放っておくと骨に転移して激しい痛みをともなうことが多いものです。高齢者が多いため、他の臓器のがんを合併する頻度も高くなります。
 前立腺がんになると、腫瘍(しゅよう)マーカー(「腫瘍マーカー」)といって、血液の中の特別な成分が増加することが古くから知られています。最近ではこの研究がさらに進み、非常に鋭敏なマーカー(「PSA(PA)(前立腺特異抗原)」)が開発され、前立腺がんの9割以上が異常値を示しています。
 このため、老人検診などの際にこのマーカーの検査から、前立腺がんが発見されることが多くなっています。
[症状]
 初期には痛みや排尿障害、血尿などの症状はなく、なんの症状もないのが特徴といえます。進行してくると、頻尿(ひんにょう)、排尿困難、残尿感(ざんにょうかん)、ついには尿閉(にょうへい)などの排尿障害がおこります。さらに進行すると、転移による激しい骨の痛み、貧血や下肢(かし)のむくみなどがおこります。
[検査と診断]
 発病の初期はまったく無症状で、50歳以上になると発病する危険が高いがんですから、年に1回ぐらいは泌尿器科(ひにょうきか)専門医の検査を定期的に受けることがたいせつです。またこの年齢になったら、チャンスがあれば前述のマーカーの検査を受けるようにしましょう。
 経直腸触診(けいちょくちょうしょくしん)といって、肛門(こうもん)から指を挿入して前立腺を触れてみる検査がありますが(痛くはありません)、熟達した専門医ならば非常に高率で、がんかどうかがわかります。しかし、最近は触診でわからないような小さながんも増加しているので、触診、腫瘍マーカーや超音波検査の組み合わせで診断を進めていきます。
 がんの存在が疑われるときは、前立腺の組織を一部採取して、がんかどうかを病理学的に調べる前立腺生検(せいけん)を行ないます。
 これは、直腸を介して、または会陰部(えいんぶ)から特殊な針を使って前立腺を採取するのが一般的で、通院でも行なえますが、入院しての検査のほうがより確実で安全性が高いようです。また、経尿道的に前立腺を切除して病理学的検査を行なう場合もあります。
 がんの広がりや転移などを調べるために、排泄性尿路造影(はいせつせいにょうろぞうえい)、尿道造影、超音波検査、CT、MRI、骨・腫瘍シンチグラフィー、骨X線撮影などの画像診断が行なわれます。
◎初期であれば手術療法も
[治療]
 前立腺がんは、その広がりや年齢によって治療法がちがいます。前立腺がんは男性ホルモン依存性のものが多く、抗男性ホルモン療法によってよくコントロールされることが古くから知られています。
 早期で、年齢が比較的若い患者さんには、前立腺を摘出してしまう手術療法が行なわれます。また放射線療法、がん化学療法も行なわれます。
 どの治療法を選択するかは、専門医とよく相談して決めてください。
●手術療法
 手術療法は、がんが前立腺の一部分にとどまっていて、年齢の若い人に行なわれます。
 全身麻酔のもとで、被膜(ひまく)を含めた前立腺と精嚢腺(せいのうせん)とをすべて摘出します。その後いったん切断した尿道と膀胱を縫い合わせ、転移を防ぐため、周囲のリンパ節をすべて摘出するリンパ節郭清(かくせい)も行ないます。
 これらの操作を骨盤内(こつばんない)の深い部位で行なうので、手術に5~6時間以上はかかり、輸血も2000mℓ以上必要になることもあります。
 手術後は、体外へ尿を導くために、3~4週間カテーテルを尿道に入れておきます。最近は手術法が改良されていますが、5~10%の人に手術後尿失禁(にょうしっきん)がおこります。尿失禁は2~3か月で治る場合と、治らないで生涯続く場合とがあります。
●抗男性ホルモン療法
 前立腺がんは男性ホルモンに依存しているがんなので、男性ホルモンを体内で産生しないようにしたり、ホルモン剤を内服することで前立腺がんをコントロールすることが半世紀以上前から行なわれています。
 抗男性ホルモン療法は、高齢者や、がんがかなり広がっている患者さん、転移のある患者さんに行なわれます。日本ではまだまだこのような前立腺がんが多いので、抗男性ホルモン療法が治療の中心になっています。
 この治療法では、まず去勢術(きょせいじゅつ)を行ないます。これには、男性ホルモンのおおもとである精巣(せいそう)(睾丸(こうがん))を手術で摘出し、男性ホルモンをつくれなくする方法と、最近では、注射によって精巣が男性ホルモンを産生しないようにする、化学的な去勢法とがあります。
 女性ホルモンの内服は、手術的去勢術に合わせて用いられることが多いのですが、ときには単独で使われる場合もあります。女性ホルモンの内服では、まれに心臓に障害がおこることがあります。また、乳房が女性のように大きくなったり痛くなったりすることが、一時的にあります。
 抗男性ホルモン療法では、前立腺がんが根治して消失してしまうことは少なく、がんの勢いを減弱して、症状をやわらげ、たとえがんが体内に存在しても、障害をおこさないで天寿を全うすることを目的としています。
 転移のある患者さんでも、抗男性ホルモン療法によって長生きをされ、前立腺がん以外の原因で亡くなる人が多いのも事実です。
 たとえ痛みなどの症状が消えたからといって、治療を中断すると、せっかく勢いの弱ったがんが、すぐにもとの勢いを取り戻して、再発したり転移したりします。
 原因はわかりませんが、前立腺がんのなかには、抗男性ホルモン療法がまったく効かないものや、数年間よく効いていたのに効果がなくなってしまうというものもあります。担当の先生によく診(み)てもらいながら、抗男性ホルモン療法を受けるようにしましょう。
●放射線療法
 放射線療法は、前立腺のある場所をめがけて放射線を照射する治療法ですが、これは、がんがある程度広がっていて転移(リンパ腺を含めて)のない場合に用いられます。だいたい5~7週間照射を行ないます。通院でも放射線療法は可能ですが、入院して治療したほうがよいでしょう。昔はがんに効くだけの量の放射線を照射すると、非常に強い障害がおこりましたが、最近は放射線治療機器と照射法が改良され、障害は少なくなりました。抗男性ホルモン療法と併用するとより効果的です。
 また、骨に転移があって痛みの激しいときには、痛みをとる目的で、転移した部位をめがけて放射線を照射しますが、これも効果的です。
●がん化学療法
 抗男性ホルモン療法がまったく効かなかったり、一時的に効いても効果がなくなった患者さんに、多数の抗がん剤を組み合わせてがん化学療法を長い期間をかけて(数か月単位)行なう場合があります。
 副作用も相当強いのですが、数年間も化学療法を続けている患者さんもいます。この治療には、放射線療法も併用されます。

出典|小学館
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食の医学館の解説

ぜんりつせんがん【前立腺がん】

《どんな病気か?》
 前立腺(ぜんりつせん)がんは男性に発生するがんで、欧米では多くみられます。日本では、ほかのがんとくらべるとそれほどではありませんが、最近では増加の傾向にあります。とくに50歳以降に多くみられ、8割が65歳以上と、典型的な高齢者のがんといえます。
 おもな原因は、加齢にともなう女性ホルモン分泌の減少によるホルモンのアンバランスだとされていますが、まだはっきりした原因は解明されていません。
 前立腺がんは、初期段階では排尿障害がみられません。進行とともに、頻尿(ひんにょう)、残尿感(ざんにょうかん)、排尿困難(はいにょうこんなん)などの排尿障害が現れます。
《関連する食品》
〈ファイトケミカルがホルモンバランスをととのえる〉
○栄養成分としての働きから
 前立腺がんは、日本人男性にくらべ、26倍もの確率で欧米人男性にみられることから、日本人男性の血液中に多く含まれるファイトケミカルに注目が集まっています。
 ファイトケミカルはフラボノイドと呼ばれる物質で、人間の体でいうエストロゲンというホルモンに似た構造をもっています。そのため、ホルモンバランスの乱れが原因といわれる前立腺がんに効果があるのです。
 ファイトケミカルはとうふなどのダイズ類、カボチャサラダ菜キャベツなどの野菜に含まれています。
 とくに、ファイトケミカルのなかでもインゲンマメやアルファルファなどに含まれるイソフラボンは前立腺がんの予防に有効といわれます。
 トマトに含まれるリコピンも前立腺がんを予防するといわれています。冷やしトマトやサラダだけでなく、多くの料理に利用して十分な摂取を心がけましょう。

出典|小学館
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